降谷零 中編小説＊3

【未来と夢】＊中 ページ2

『こんなところで寝てると風邪引くよ』


高い声が聞こえ目を開けた
目の前に女の人の顔があって驚き飛び起きて距離をとる


『降谷零。かっこいい名前だね』


教えた覚えのない俺の名前を彼女は口にする
怪訝な目で見ていると笑い出す


『ランドセルの中』


公園に備え付けられたベンチとテーブルにノートや鉛筆、放り投げていたランドセルの蓋が開いていて俺の名前が見えていた


『綺麗な目の色だね』


その言葉に柔らかく笑う彼女に一目惚れをした


「俺は警察官になるんだ！そして日本を守る！」

『君らしいね』

「(人1)の夢は？」

『ふふ、いつか教えてあげる約束しようか』


あれから(人1)とよく話すようになり勉強を教えて貰っていた
(人1)は頭が良くて何でも知っていた





彼女と知り合って半年が経とうとしたある日
いつもの時間に公園に向かえば彼女が倒れていた

病院で白衣を着た女の人から彼女のことを聞いた
心臓が弱くて長く生きれないことを



病室の窓から外を見る(人1)に声がかけられない
俺に気付いた(人1)は話し出す


『私は幸せだよ
勉強出来て遊べて

それに君にも会えたからね』


悲しそうな目で柔らかな笑顔を浮かべる

その日から毎日病室に通った
容態がいつ急変するか分からないから


『ありがとう
私と一緒にいてくれて

本当のこと言うとね
神様ってちょっと意地悪だなって思うよ

君の未来を見たいって思っちゃったから』


俺は彼女の事情を知ってから上手く笑えなくなった
それに気づいて辛そうな顔をする彼女






通りかかった公園に見慣れた後ろ姿が見えて駆け寄った
病室を抜け出してきた(人1)は口許に人差し指を当て『内緒ね』と笑う


『君に会いたくて』


久しぶりに見る制服姿の(人1)は痩せていて昨日よりも顔色が悪い


『もう病室には来ないで』


ベンチから立ち上がった彼女は俺の頭を撫でおでこにキスをした
笑いながら歩き出す(人1)に何も言えずに固まる


『私の分まで、君は夢を叶えてね』


夕日が彼女を照らし
夜の青が彼女を隠す



振り向いた彼女は柔らかな笑顔を浮かべて


『さよなら』


いつか別れが来ると知ってた

もし最初から分かっていたとしても
俺は離れたくなくて手を伸ばすだろう



けれど、伸ばした手は彼女には届かない








『ありがとう』





彼女の笑顔を焼き付ける



辛い時

苦しい時には



彼女の強さを思い出して

彼女が望んだ世界を守れるように

【未来と夢】＊下→←【未来と夢】＊上※Mr.ChildrenのHANABIより※

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