神田ユウ中編小説 (ページ10)

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【風の力】＊上ページ10

今度は私に貴方を守らせて

風が強く吹いた。
温かく優しい風が、私の体を包むように。

何百人もいる探索部隊と数人しかいないエクソシスト。

私達、黒の教団第2班探索部隊はエクソシスト様の補佐や、世界各地を回りAKUMAの情報や、イノセンスの情報をひたすら集めて室長に報告する。

今日の任務地はイギリス。
内容はイングランドにある一番大きな教会の周りを竜巻が覆っている現象を調べること。
一週間ほどずっと渦巻いているらしい。
他の建物にはなんの影響もなく、教会の周りが壊れているわけでもない。

不思議で奇怪な現象。

イノセンスがある可能性が高く、3日前に訪れた探索部隊3名が行方不明になってしまった。

エクソシストが1名こちらに向かってきていて明日の朝には着くらしいので、私は情報収集と竜巻を見にいくことにした。

夜辺りが暗くなってきた頃、私はイングランド南東部にある大聖堂の前にいた。
大聖堂は大きな竜巻に覆われていて、辺り一面にはAKUMAの残骸が散らばっている。
街には人がいなくやっと見つけた人に話を聞くと、中には何百人もの住民達が閉じ込められていて近づくのは危険だと言われた。

私は一歩一歩大聖堂に向かって歩いていく。
近づくたびに風は強くなり小さな竜巻が私を
覆う…けれどなぜだか怖くはなかった。
それどころか早く行かなくてはならないと今まで感じたことのない気持ちになった。

私は激しく渦巻いている竜巻に手を伸ばそうとすると、後ろから聞き覚えのある不機嫌な声が聞こえ、伸ばした手を掴まれた。

いつの間にか私を覆っていた小さな竜巻は消えていた。

「危ねぇだろ。」

『…神田さん早い到着ですね』

探索部隊の誰もが嫌っているエクソシスト。

神田ユウ

口が悪くて、態度が冷たくて、いつも機嫌が悪くて…

けれど、私は彼が優しいのを知っている。
初めて任務に同行した時にAKUMAから助けてもらったことがある。
行く前には「俺は助けない」と言っていた彼がだ。

きっと緊張してる相手を気遣って冷たい言葉を使うんだ。

怪我をしないように気を張れってことだと私は思った。

2日安静にと病室で休んでいると、たまに顔を出して無言で出てく。

最初は何がしたいのか分からなかったけど、リナリーちゃんから聞いた話では、私を心配してくれているらしい。
なんだか嬉しくて聞いているか分からないけど神田さんに向かって世間話をするようになった。