神田ユウ中編小説 (ページ42)

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《氷の力》＊上ページ42

季節外れの景色が目の前に広がる。

氷が辺り一面を覆っていて
キラキラとダイヤモンドダストが舞い
雪がゆらゆら降っている

その中を白髪の女が歩いている。

『…終わり…かな』

白髪の女は青い目を閉じ
歩くのをやめ溜息をつく。

黒い服には血が滲んでいて
白い肌には青白い痕が浮かんでいる。

身体中が傷だらけだが
もう痛みを感じることは出来ない。

氷点下まで下回っている気温は
体から力を奪っていく。

自分のイノセンスだった

氷は

体を蝕んでいく

指先も

睫毛も

心臓も

凍っていく

溶けていく

氷のように

雪のように

『……雪みたい』

女の声は雪に吸い込まれて消えていく。

体がキラキラと朝日に反射して
ダイヤモンドダストがよりいっそう輝きを増す。

女の体は雪に溶けて消えていく。

あの時は彼がいてくれたから
生きることが出来た。

自分に誓った。

彼に貰った命は
彼の為に使うと。

私は後悔してないよ……。

彼の為に戦えたから

彼の為に生きれたから

だから、後悔しないで。

雪のように溶けて消えていく

私の為なんかに

『もう…歩けないや』

暗く寒い雪の降る夜の日。
命の灯火が消えかけていた私の前に彼が現れた。

黒い服を纏い
長い黒髪を揺らして彼は言った。

「死ぬな」

たった一言だけ。
それなのに私の目からはとめどなく涙が溢れた。

『生きたい』

そう言うと彼は自分の手首を切って私に血を飲ませた。そしたら、体が暖かくなって弱かった心臓の音が強く脈打った。

それと同時に彼が持っていた小さなキューブが光り始めた。

どうすればいいのかが伝わってきた。

掌の上で液体になったそれを飲み込んだ。

彼は神田ユウ

エクソシストで元帥で
適合者を探しながら
AKUMAを倒して
白髪の青年を探してるらしい

私と同じ髪の青年を。

その青年と私を重ねているのか
優しい目で優しい声で
その青年のことや
後悔してることを話してくれた。

その青年はアレン・ウォーカー

エクソシストでノアの14番目で
優しくて真面目で
泣き虫で煩くて
誰かの為に戦う人だと
俺のせいで……と。

そんな彼が…ユウが私を救ってくれた。

なら、私はユウの為に戦おう。

ユウがくれた命を無駄にしないように。

ユウがアレンに会えるように。