神田ユウ中編小説 (ページ36)

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↑続編【理由】＊上ページ36

どこまでも広がって
眩しいほど青い空に
黒い塊が何千と浮かぶ

世界の終わりはこんな感じなのか

と他人事のように思う

『刀を握るなら迷わないで。』

背中合わせになって
あなたに声をかける

触れた背は私よりも少し小さくて温かい

『振り向かないで走って』

私の言葉を聞き入れた元帥に
優しいあなたは反抗して
私の為に声を張り上げる

"置いていけるわけないだろ！！"

"くそっ……すぐに戻ってくるからな！それまで待っててくれ！！"

懐かしい記憶が溢れてくる

守りたいものがある

どんなに苦しくても
どんなに辛くても

自分が壊れても
呑み込まれても

あなたが戦わずにいられるように

あの子と一緒に笑い合える日々を

『ごめんね』

けれど

私は守れなかった

あなたの恋人も
あなたの友達も

『なにが聖職者よ

世界が救われても

そこにあなたたちがいないなら意味ないじゃない』

守ることすら出来なかった

『神なんていないのよ。イノセンスなんて』

けれど

その神にすがってしか

イノセンスに頼ってしか

守れないものがある

嘘でも

まがいものでも

たとえ叶わなくても

もう願うことしか出来ない

『あなただけでも守りたかった…』

見上げた青いはずの空は

黒く染まって光さえ通さない

金の装飾が施された黒い服に腕を通す
胸元の十字架が存在を主張するように光に反射する

背中に自身の背丈よりも長い長剣を背負う

真っ直ぐ前を向き歩く

アジア支部の大会議室の扉を開ければ
中には元帥をはじめとした
上層部の権力者が集まっていた

真ん中に設置された椅子に
なんの躊躇いもなく座り手と足を組む

『ただいま。そう言えば満足かしら？』

女が口を開いた途端に静寂になり
張り詰めた空気が流れ始める

その空気を破ったのは
アジア支部のズゥ・メイ・チャン老師

「……どうして戻ってきた」
『どうして？あなたたちが一番理解しているはずよ』

ズゥ老師は顔を歪め、口を閉じた
女は嗤って憎悪のこもった目を向ける

「茶番はいい。

これからセカンドエクソシストの
被験体失敗作(人1)

元、" "元帥の

審議を開始する」

中央庁のバッチをつけた男が
今までの(人1)と"本体"の経歴を読み上げる

功績

信頼

技術

(人1)は興味ないとでも言うように

目を閉じた