神田ユウ中編小説 (ページ34)

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【師弟】＊上ページ34

"真っ直ぐ前を見なさい"

記憶の中のあいつはいつも俺の前に立っていた

アジア支部からティエドール元帥と本部へ移動中
適合者探しとAKUMA討伐で色んな町に寄った。

森に囲まれた村
小さな湖を中心にした町
大きな風車がある町

今向かっている町には港があるらしい

アジア支部を出て数日間自由に歩いた
目的も希望もない俺はどうすればいいのか分からずにいた

そんな俺の前に元帥が現れ
反抗することもせずに俺は元帥の後を付いてきた。

「なぁ、女のエクソシストっていんのか？」

「んーそうだね。今はクラウド元帥ぐらいだね」

元帥は顎に手をあて考える。
悩み出てきたのは知るはずもない名前で

「……刀使うやつか？」

「いや。動物ー」

刀を使うエクソシストの女はいないという。
それからクラウド元帥の事を話始めるが俺は聞き流す。

"あなたは私の……"

壊れた記憶は俺をを苦しめる。

殺気を感じ上を見上げると

AKUMAの大群が小さな町へ向かっていくのが見えた
エクソシストの俺たちに見向きもせずに

もしかしたらイノセンスがあるかもしれないと
元帥が真剣な目をし、急ぎ足で向かう

あの日を思い出す
はじめて見たはずの空を知っていた時のことを

建物は壊れ、瓦礫で足場が不安定で
所々に死体、血痕、AKUMAの残骸

その中に俺と同じぐらいの年の血塗れの女が立っていた

長い黒い髪から覗く目は紅色で

青い空を見つめる

口元は嗤っていた

俺と目があったあいつは驚いたように
目を見開いて俺の隣にいる元帥を睨み付ける

『どうしてここにいるのかしら？』

「AKUMAの群れがここに向かっていてね。君一人では危ない」

知ってる

『……上から私とその子を会わすなと命令が下っているはずよ』

「戦場では何があるかわからない。言い訳は考えてるよ」

『ふざけないで。』

あぁ、俺はあいつを知ってる

『私と会って思い出したらどうするの？その子の記憶はー" "の記憶を思い出したらー』

あいつは俺のことを"知らない名前"で呼ぶ

あいつも俺と同じセカンドで
俺が持ってない"本体の記憶"を持ってる

俺とあいつは師弟で

"私は弟子は取らないの。他を当たりなさい"

会えば俺が暴走すると上層部に言われて

あいつの存在は元帥と上層部の奴らしか知らない

あいつの目

アルマと同じだ

絶望

諦め

怒り

憎悪

自分の弱さに

無力な自分に