【怪我】＊下 ページ33
「少し寝る」
神田は横になったまま言い寝返りをうつ。
『……その前に背中見せなさい』
その瞬間少し…ほんの少しだけ顔が歪むのを(人1)は見逃さなかった。
『今日は背中ね』と言うと神田は眉間にシワを寄せ憂を睨む。
『私のところに来たんだから、痛むんでしょ？手当てしたら痛み止めの薬出してあげるから早くして』
神田しぶしぶ体を起こしベッドへ座り上着を脱いで(人1)に背を向けた。
肩から胴の辺りまで引っ掛かれたような傷があった。
傷の手当てをしながら(人1)は顔を歪める。
『元帥になったって聞いたわ』
「……リナか」
リナリーは1週間に1回はここに顔をだす。
不安なことや心配なことを私に話してくれる。
私は抱き締めてあげることしか出来ないけれど。
『本当にいいの？』
「教団は許せない……だかやることがある」
『これ以上怪我したら』
神田の体はボロボロで治癒能力も無くなってきている。
……前回診察したときよりも呪符が体を覆っている。
(人1)はそれ以上先のことが言えず黙ってしまう。
「モヤシを殴るまで死なねぇよ」
「俺は神田ユウとして生きる」
「それに今の体は普通の人間と大差ないだろ。俺は今の方がいい」
普通の人間。
神田が望んでいたもの。
「それに何かあれば(人1)が助けてくれるだろ？」
『バカね。何か無いことを祈るわ』
包帯を巻いて『手当て終了ね』というと薬品棚へ歩いていく。引き出しを開け痛み止めの錠剤を紙袋に入れる。
神田に背を向けたまま言う。
『だから、理由なんて作らなくていいから会いに来てくれると嬉しいわ』
神田は憂の側まで歩いていき抱き締める。
憂は神田の首に両手を伸ばす。
『神田が無事で良かった』
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作者名：憂 | 作成日時：2016年10月30日 21時
