神田ユウ中編小説 (ページ32)

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【怪我】＊上ページ32

白い壁
白いベット
白いカーテン
白い大きな棚
薬品の臭いが漂う部屋

-医務室-

白衣を着た長身の女は持っていた書類の束を机に乗せると
カーテンで仕切られている場所へ目を向ける。

カツカツとヒールの音をたてて近づき
カーテンを掴むと勢いよく開けた。

『コムイ室長……リナリーが探してます。リーバー班長も』
「ハハハ、(人1)ちゃん匿ってくれないかな？」
『嫌ですよ。厄介事には関わりたくないわ』

そこには眼鏡を外しベッドに横たわり少しやつれた顔をしたコムイ室長がいた。
頭をかきながら眼鏡を探す室長に(人1)はいつものようにポケットから鍵を取り出した。

『休むならどうぞ。リナリー達には私から言っておきます』
「いつもありがとう」
『室長に倒れられては皆困りますから』

室長は鍵を受け取ると医務室を出る。
足音が聞こえなくなると、室長が寝ていたベッドの隣へ声をかける。

『いつまで隠れてるつもり？開けるわよ』

カーテンを開けるとベッドにはエクソシストの神田ユウが横になっていた。
(人1)は２度と会えないと思っていた人に会えたことで口元を緩めながら、先程まで室長が寝ていたベッドに座り足を組む。

「……憂」
『室長は寝不足で神田に気づかなかったみたいだけどね』
「隠れてるつもりねぇよ」
『貴方がここにいるってことはリナリーか婦長から隠れてる証拠でしょ？』

神田が本部へ来たときから何かあると私の所に来ていた。
本人は「ここにいれば文句言われないから」らしい。
医務長の私の側なら頷ける。

「……さっきの何だよ」
『室長のこと？』

神田は(人1)に背を向けたまま「何渡した？」と質問する。

『あぁ、鍵のことね。ここの本部に移動してから私の持ち部屋増えたのよ。室長に渡したのは私の仮眠室の鍵。さすがに医務室に室長が寝ていたら来た人びっくりしちゃうでしょ？』
「あぁ確かに驚いたな。」

室長には中央庁から来た専属の医者がいる。
……生活習慣まで管理されていて、食事にも厳しい人で私とは気が合わない人だった。

室長も合わない人なのか(合わないだろう)私の所に逃げてくる。
一度ここで仮眠しているところを見られ一時間程説教された。私も一緒に。

その事があってから私しか使わない仮眠室を貸すようになった。

「仲良いんだな」