神田ユウ中編小説 (ページ28)

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【過ち】＊上ページ28

『ごめんなさい』
「うるせぇ」

神田ユウに会うたびに口にする謝罪の言葉

ごめんなさい

貴方たちの人生を壊してしまった

ごめんなさい

貴方の笑顔を奪ってしまった

アジア支部の第六研究所だった場所で
エクソシストの黒服を纏った女は佇む

肘まで袖をまくり
両腕の十字架の傷を見つめ顔を歪める

「またここにいたのか(人1)……忘れられないのか」
『…忘れられるわけないよ。バク兄様だってそうでしょ？私達は罪を背負って生きていかなくちゃいけないの』
「すまない…キミにも背負わせてしまった…キミをエクソシストにしてしまった」
『私が許せないのは…何も出来なかった自分だよ』

(人1)はアジア支部長のバク・チャンの隣を通りすぎ『お願い』と言うとウォンの後ろをついていった。
その後ろ姿を少しの間眺めバクは歩き出した。
握りしめた掌から血が滴り落ちる。

両腕の傷が疼く
神を否定する私を
イノセンスが拒絶する
罪に呑まれそうになる
私を神は嘲笑う

咎落ち

ズゥ・メイ・チャンが検診中の(人1)の元に訪れた。
ズゥはバクを退室させ、(人1)の両腕を見てから声をかけ頭を下げた。

「すまぬ…お主にだけわしの過去の行いを…」
『ズゥじい様顔を上げてください。私は大丈夫です。』
「……バクにはまだ」
『バク兄様には支部を守る役目があります。知っているのは私とフォーとズゥじい様だけで十分ですよ』
「すまぬ」

(人1)は点滴を外し、バクから貰った薬を飲む。
ズゥに頭を下げ、バクにお礼をいいその場を後にした。

(人1)本部に戻るなか
腕の傷みが引いていくのを感じながら昔を思い出す。

9年前の惨劇

人造使徒計画

罪の重さと命の儚さ

第二使徒計画

大勢の犠牲者を出した
中国・アジア支部第六研究所

聖戦の為に実を結ばない非適合者への人体実験の果てに
教団は適合者の人造化でその数を守ることに着手し

戦闘不能になった
適合者の脳の一部を別の器に移植することで
イノセンスの適合権が移行するか実験した

この実験に関わった研究所職員計46名は
暴走した被験体の"Alma "によって惨殺され

もう一人の被験体"YU"は
"Alma"が再生しなくなるまで彼をバラバラに破壊した

生き残った(人1)とレニーは何も出来ず

フォーは
エドガー博士やトゥイ支部長達の意思に従って
守ることをせずに悲劇を見守った

あの時の私にこの力があったのなら少しは
皆を救えたのかもしれない