神田ユウ中編小説 (ページ24)

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【歌姫】レベル4襲撃＊上ページ24

声に願いを乗せ

蝶に想いを託す

『生きて』と

私の歌声だけが教団に響き渡る

気がつくと
腹部にパイプが刺さり血が溢れ
頭を強く打ったようで視界が霞んでいた。

今の状況を確認しようと起き上がろうとするが動きを止め、元の体制へ戻す。

下から水が流れる音がする。
今私が少しでも動けばこの場所は崩れ落ちてしまいそうだ。
大小さまざまな瓦礫やガラス、何かの機械の破片までもが散乱している。

レベル4の攻撃で皆んなが居るところよりもだいぶ下の階に落とされたようだ。

上からはまだ破壊音が聞こえ、戦っているのがわかる。

最後に見たレベル4はリナリーとアレンに攻撃を仕掛けていた。イノセンスを発動できたばかりのリナリーと限界が近いアレンで倒せるだろうか…。

イノセンスがないラビや神田くんは大丈夫だろうか…。

お願い
私に力を
皆んなを助けられる力を”返して”

臨界地点を超えれれば助けられる
私はもう十分生きたよ。
だから皆んなには…神田くんにはもっと生きていて欲しい。

神田くんは生きろと言ってくれたけれど…

『イノ…センス私の願…い届け…て』

私の体からは止めどなく血が流れ出る。

『"血"よ。"蝶"に姿を変え、教団の人に私の"命"を…"声"で…届けて』

流れ落ちた血は数百羽の蝶に姿を変え上へと飛び立つ。
その姿を見届け夢は歌い始めた。

『～♪』

みんなの無事を祈って

みんなに力を与え

みんなに命を

”ワタシタチ”は幼い頃から人生を決められていた。
教団に使われて命が尽きるまで歌い続ける。

”ワタシタチ”はそうだった。

イノセンスが見せる記憶に絶望して、
拒絶され声を失って、
使命から目を逸らし
戦いから逃げ出した。

生まれた意味も
生きる意味も
どうでも良くなって…。

母がまだいた頃聞いたことがあった。

どうして教団で生きてるのか
どうして命を削ってまで誰かを救わなければならないのか

母は悲しそうに言った

「(人1)がもっと大きくなれば分かるわ。
でも、その時にはきっと…」

その言葉の意味をやっと理解出来た

大切な人が出来た
守りたい人が出来た
助けたい人が出来た

仲間が沢山出来た

歌声は教団に鳴り響く。
優しく温かい歌声が、教団に勇気と希望を与える。

(人1)の近くに一羽の蝶が舞い降りる。
寄り添うように肩にとまる。