神田ユウ中編小説 (ページ17)

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≪ミライ≫＊上ページ17

未来なんて見えなければいいのに
今だけを生きていたいのに

見えてしまう残酷な未来

私には見ることしか出来なくて
未来を変えられる力はなくて

これから起こることなんて知りたくなくて

知ってしまったら私の命は削られていく……

でも、そんな世界でも良いこともあって
仲間の顔を見ることができた

笑ったり

怒ったり

泣いたり

知ることが出来なかったことを知れた

けれど、白黒の世界で全てを知ることなんて出来ない

教団の一室に聖女の像が置かれている部屋がある
その部屋で足枷を付けられた女が膝をつき手を合わせ
聖女に祈りを捧げていた
両目は閉じられ一筋の雫が頬を伝う

そんな女に長髪の男は声をかける

「憂…終わったか？」

『はい』

「…体は大丈夫か？」

『ふふ、神田さんは心配性ですね。大丈夫ですよ』

「行きたい場所はあるか？」

『外に行きたいです』

憂は祈りを中断し振り返る。
その目には何も写らない。

目の前の男の姿さえ…

憂を車椅子に乗せ教団の外へ
いつも神田が鍛練をしている森の手前まで連れていく。
風が吹き髪が揺れる。

『ここは静かで素敵ですね』
「あぁ」

『今目の前の木の葉は何色をしていますか？』
「赤だ。秋だからな」

『今私の肩に乗っている鳥は何色ですか？』
「青だ。空と同じ色の鳥だ」

『きっと綺麗な色をしているのですね』
「……あぁ」

産まれたときから両目の視力がなかった。
医者には原因不明の病だと言われた。
それでも両親は沢山の愛を与えてくれた。
治せることを信じ、必死で働いてくれていた。

けれど幸せな日々は過ぎて

5才の誕生日

未来を見た

これから起こる戦争
千年伯爵やAKUMA
エクソシストやイノセンス

両親は私を守ってくれたけれど、教団には逆らえなくて
私は教団という鳥籠の中に閉じ込められた

私のイノセンスは命を削って
未来を視るものと
触れた相手の過去を見れる能力だった

自分の意思では見れなくて
見た未来がいつ起こるのかもわからないし
その人の過去を見るなんて最低な能力で

嫌い

何度も未来を見て

何度も絶望した

そんな私に教団の人は皆口を揃えて可哀想だと言う
私も自分をそう思っていた

気を使って声をかけてくれる女の子も

無理はしないでと心配してくれる男の人も

皆そう思っていただろう

けれど
貴方だけは違っていて

初めて会ったときから
私を可哀想と思わずに接してくれた