神田ユウ中編小説 (ページ12)

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【いつの間にか】＊上ページ12

きっかけは些細な事で、他人が知ったら最低だと罵倒するだろう。

だけど、それでもこの関係を終わらせる事なんて出来なくて。

一番最低なのはあなたじゃない彼を想っている私。

白い天井とあなたを見ながら私は快楽に呑まれようとしている。

あなたも限界が近いみたいで腰の動きが激しさを増す。

その度に抑えられない声が溢れてしまう。

私の左手はあなたの右手に絡まり、私の右手は真っ白なシーツに皺を付ける。

私の唇はあなたの唇で塞がれる。

私の体にはいくつもの花弁が舞っていて今日の事情を物語る。

しばらくは大浴場には行けないなと考えながらヤメテなんて言わない。

私を壊して欲しいから。

私の瞳にはあなたじゃない彼がいる。
あなたの瞳には私じゃないあの人がいる。

どうしようも出来ないこの想いをぶつけられる相手が欲しかった。

きっとあなたもそう。

愛の言葉は交わさない。

頬を伝うものは涙が汗なのかわからない。

『行くね。体治ったばかりなんだから無茶はしないでね』

「…あぁ。気をつける」

お互い体を合わせた後は話なんてしなくて呼吸が整ったら自室に帰る。

神田くんは任務で怪我をして医務室に強制的に入院させられている。
本人は治ったと言っているが婦長さんが退院の許可をくれないらしい。

私は任務帰りで様子を見に行くとベットには神田くんがいなくて、ベットに触れると温かかったからお手洗いかな？と思い後ろを向いた瞬間、視界が反転した。

そして抱かれた。

最初に抱かれた日もそんな感じだった。
その時は私が風邪をひいて、なぜか神田くんが看病に来てくれた。
熱が高くてうる覚えでほとんど思い出せないけど、きっと私が弱音を吐いた。
どうしようもない想いを神田くんにぶつけたんだ。

何度も何度も彼の名前を呼んだ気がする。
何度も何度も愛の言葉を紡いだ気がする。

その時の神田くんの辛そうな顔が脳裏に焼き付いて離れない。

『ごめんね』

病室を後にして、自室でシャワーを浴びる。
鏡に写った自分を見て、これを付けたのが彼だったらと…神田くんに酷い事を思う。

今回はパリでの任務。
アレンくんと神田くんとリナリー。
昨日からAKUMAが大量発生しているらしく危ないからと4人での任務になった。

1時間ほど戦った後、次々に出て来るAKUMAに嫌気がさしてきた頃。遠くに人の姿が見えた。

スーツを着崩して煙草を吸っている褐色の肌の彼を見て私の心臓は早鐘のように脈打つ。