神田ユウ中編小説 (ページ11)

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【風の力】＊下ページ11

神田さんに酒場で聞いた話を伝えた。
大聖堂の聖女の像の中にイノセンスがある可能性が高くどうやって竜巻の中に入るかを思案する。

「この街には人は居たか？」
『え？酒場に男性の方が1人だけ…ひとり？もしかして…』
「そいつはAKUMAだろうな」
『てことは、この竜巻は町の人達を守ってるって事ですよね？』

「…来るぞ」

神田さんは六幻を構え。私を背中に隠す。
前からはAKUMAが百体以上、烏のように空を覆っていた。

風が吹く。
私の髪が靡く。
温かくて優しい風が私を包む。

『待って下さい！神田さん！こっちです！』
「は？お前バカか！そっちは竜巻が…！？」

私は神田さんの手を取り竜巻に反対の手を伸ばす。竜巻に触れると人が通れるぐらいの穴が開く。私は迷わずに大聖堂の中に入り、大勢の人達と探索部隊達をかき分けて中央に堂々と立っているの聖女の像の前に止まる。

『私を呼んだのは貴女でしょ？』

私は両手を伸ばし聖女の像に呼びかけた。
すると像の眼から赤いものが流れ、それはキューブになって私の手の中へ。

「イノセンスだな…」

『私の…力…』

私は強くないけれど
あなたの後ろ姿を見て思ったことがあるの

真っ直ぐ前を見て、迷わずに刀を振るうあなたの

力になりたい
あなたと同じ場所で戦いたい

あなたを守りたい

私は迷わずに液体化したイノセンスを飲み込んだ。すると両肩から血が流れ出てきて白いコートを赤黒く染まる。

胸が苦しくて、息が上手くできなくて

「大丈夫だ」

私の肩を支えてくてるあなたはやっぱり優しくて、綺麗な顔を歪めて私を安心させる言葉を繰り返す。

住民達が叫ぶ、外の竜巻が消えた、もうこの街は終わりだ、私達は助からないのかと。

「俺は先に外に行ってAKUMAを破壊して来る。お前は落ち着いたら来い。」

神田さんは大聖堂の外へ。
私の異変に気付いた女の子が近づいてきて大丈夫？と声をかけてくれる。

ああ、私が守らなきゃいけない。
貴方と一緒に。

もう守られてる側じゃないから。
貴方と一緒に私も戦う。

『大丈夫よ。私達"エクソシスト"が貴方達を守るわ。』

風が強く吹いた。
温かく優しい風が、私の体を包むように。
服は白から黒へ変わる。
両肩からは止めどなく血が流れて、武器に変わる。

扇

風を操るイノセンス。

守りたい
だからどうか私に力を下さい

前を見て
立ち上がって
貴方の隣に並んで
私の背丈もある扇を振るう。
風を纏う。

これで私も戦える。