神田ユウ中編小説 (ページ1)

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《大っ嫌い》＊上ページ1

ずっとずっと想っていた。貴方を。
初めて会ったあの日から。ずっと。

優しすぎる貴方が大っ嫌いだった。
不機嫌な顔、不器用な態度、乱暴な言葉、私に向けられる真っ直ぐな瞳。全てが嫌いだった。

真っ暗闇に月の光が淡く金髪の女と黒髪の男を照らす。

『貴方が大っ嫌いよ』

壊れている建物。
土埃が宙を舞う。
奇怪な姿をしたAKUMAの残骸達。
黒い服を着た血まみれの男女。
男の息は荒く、腹部からは血が流れている。
女は男に跨がり首元に短剣の刃を突きつける。

「(人1)、おまえ…どう…して…っ」

『神田が大っ嫌いよ。貴方なんか。だから私が貴方を壊してあげる』

大ッ嫌い。大ッ嫌い。大ッ嫌い。

「ノア…なのか？」

女、(人1)の額には聖痕が浮かび上がり、肌は褐色色へ変化し、今まで金髪だったはずの髪は黒に変わった。その姿はまさにノアのものでエクソシストが戦わなければならない敵である。

男、神田は目を見開き、瞬きを一度し、静かに目を閉じ六幻を握る手に力を込めた。

『そうよ。貴方達の敵。ずっと騙していたの。今頃他のエクソシスト達も貴方と同じ目に遭っているわ。』

「ちっ、そうかよ。…なら、俺がお前を壊してやるよ。」

神田は六幻を握り締め、(人1)に刃を向ける。
その姿に(人1)は口元を緩めて微笑む。

刀が交じり合う音が静かな街に響き渡る。
女は目が合うたびに"嫌い"と口にする。

いつの間にか女の髪は金髪の長い髪へ変わっていて月明かりに照らされキラキラと輝く様はまるで天使のよう。
けれど、手に握られているものは血に染まった刀。

神田は「これで最後だ」と言い六幻を振り下ろす。その瞬間(人1)は自分の武器から手を離し、神田の手を取り自分の心臓に突き立てた。神田は唖然とし、(人1)から流れ出る血を見ていた。

(人1)は吐血しながら六幻を引き抜いた。
痛みに耐えながら神田の左手を強く握る。
神田はハッとし、倒れかける(人1)を自分の腕の中へ。

『私の…嘘…わかった…？』

「当たり前だ。お前初めから戦う気無かっただろう」

神田は(人1)に戦う気がないのは初めから分かっていた。本当に殺すつもりなら最初に背を向けた時や、今までにいくらでも機会があった。なのに、致命傷にもならない浅い傷を作るだけの攻撃に神田は戸惑った。意味が分からず、けれどノアは倒さなければいけない。でも、(人1)は仲間で、俺の…。