俺にはもう分からない。02 ページ15
腕を下ろし、息を吐き出す。
「いてっ……！？」
突然がつん、と額に硬いものがぶつかった。
「出て行けっ！！島から出て行け！！海賊が！！」
飛んできたものが何かを確認するよりも前に、怒声が響いた。目を吊り上げ、怒りに顔を真っ赤にした男が此方を睨みつけている。呆然とその男を見詰めた。何故人が？と疑問に思ったが、ここには町があったのだ。人がいても可笑しくはない。周りの人は怯えた顔をしていたが、次第に男に釣られたように出て行け！出て行け！叫びだす。
石がいくつも投げつけられ、傷ついた身体を更に傷付けた。耐え切れずに身体を無理やり動かして、よろよろと立ち上がる。
一歩踏み出せば人々は恐れおののき一歩退く。ティーチのように無抵抗の人間を襲うつもりはないが、一般の人から見れば海賊なんてどれも同じなんだろう。怖がられたことにショックを受けたが、今はそんな事を気にしている余裕はなかった。
涙とも雨ともとれない顔に流れる雫を手でぐいっと拭い、あざでどす黒くなった手のひらを見つめてからそっと息を吐き出す。呼吸をするだけでも身体が痛む。
「……ごめん、ごめんなさい……」
貴方達の大切な町を壊してしまって。失うことの怖さは知っている。だから、こんな謝罪では意味もないことも知っていた。痛む身体に耐えながら、ゆっくりと頭を下げた。人々が戸惑ったようにざわめく。
「……これ、少ないかも、しれないけど……これで町を、建て直してください……」
戦闘でボロボロになってしまったリュックを足元に置いた。中身は金塊と今もっている有り金全てだ。町を建て直すには少なすぎるが、それでも何かせずにはいられなかった。戸惑った表情を浮かべる人々にAは小さく笑みを浮かべてから、身体をドラゴンに変化させて空へと飛び上がる。
身体中が軋み、羽ばたくたびに激痛が走った。傷口から血が零れ落ち純白の鱗を赤く染める。まだ飛び立ってから間もないというのに息が切れる。でも止まれない。止まらない。
事態はもう俺とエースとティーチだけの問題じゃあなくなった。俺にはもうどうしたらいいのかも分からない。
お父さんのビブルカードを持ち、俺はその紙が示す方角に向けて必死に羽ばたいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 78人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
1(プロフ) - × ×さん» お読みいただきありがとうございます！ここからは展開がとても早くて、もうちょっとでラストです(*^^*) (2021年4月19日 20時) (
レス) id: d447c4ab55 (このIDを非表示/違反報告)
× ×(プロフ) - 二日遅れてしまいましたけど、読ませていただきました！ここから展開がどうなるのかワクワクドキドキです！ (2021年4月16日 10時) (レス) id: 9bb4cee45f (このIDを非表示/違反報告)
1(プロフ) - × ×さん» コメントありがとうございます！とても励みになります(*^^*)本日更新致しましたのでぜひ読んでいただけると幸いです！ (2021年4月14日 19時) (レス) id: d447c4ab55 (このIDを非表示/違反報告)
× ×(プロフ) - とても面白いです！更新楽しみに待ってます-_-b (2021年4月13日 2時) (レス) id: 9bb4cee45f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：1 | 作成日時：2021年4月9日 0時
