ドラグーンの憂鬱3 (ページ9)

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鬼ごっこ。01 ページ9

ひそひそから一転、しんと静まり返った店内でエースとスモーカーは向かい合う。かくいう俺はエースの隣にいるけれど、男は最初にちらりと見た以降こちらを見ようともしない。怖いからありがたいけど、何だコイツ雑魚かとか思われていると考えるとちょっと切ない。

「で？俺らはどうすりゃいい……！？」

「おとなしく捕まるんだな」

「却下、そりゃゴメンだ」

即答。当然といえば当然だ。コツコツ、静かな店内で男の足音は良く響いた。

「おれァ今、別の海賊を探してるとこだ。お前の首なんかにゃ興味ねェんだがな……」

なら此処に来ないでその別の海賊を追っていて欲しかった。というか何で"お前の首"ってエース単体なんだよ。……どうせ俺は雑魚ですよ、ぐすん。じゃあ見逃してくれ。とエースが不遜な態度で笑う。

「そうもいかねェ……俺が海兵で、お前が海賊である限りな……！！」

もくもくと男の身体から煙が立ち上がる――否、身体が煙になる。いつかのあの時と同じだ。これから始まるだろう戦闘に俺は身構え――

「ロケットォー！！！」

「ぐあァ！！！」「を！！？」「ぎゃっ！？」

ズドォオオオン――いったいこの一瞬に何が起こったのか、Aはすぐに理解できなかった。呆然としたままAはたった今しがた店内に豪速で飛び込んできた少年を見つめる。赤いチョッキに麦わら帽子を被った少年は周りの視線も、自分が突き飛ばした人達の事も気にせず、店主にメシ、メシ！とご飯を催促している。

「あぁ……でも君……逃げたほうが……」

立て続けに起こった衝撃的な出来事を処理し切れていないらしい店主は顔中に大粒の汗を垂らしながら、麦わらの少年に遠慮がちに声をかける。麦わらの少年はそんな店主の言葉なんて聞いていないのか、あえて聞き流しているのかせかせかと椅子に座り、エースが食べていた料理の残りを口に詰め込み始めた。