砂漠の国へ。02 ページ8
突然店主が焦った声をあげ、戸惑いを隠せない表情でAを見る。隣を確認すると、食べかけのチキンライスに突っ伏しているエースがいた。顔がライスに埋まっている。息できるのか、これ。
「ああ……心p――」
「砂漠のイチゴを食べたのかもしれん！あんた離れた方が良いぞ！」
「へ？え？ちょ……」
寝ているだけだから心配しないで、と言うよりも前に店主が腕を引っ張り、俺をエースから遠ざけた。ついでにご飯からも遠ざかった。ああ、俺の昼ごはん……。
「……砂漠のイチゴって何ですか？」
そんな変てこな物食べてはいないと思うけど、気になったから聞いてみた。"イチゴ"と名がついているものの、それは赤いイチゴのような姿の毒蜘蛛らしい。間違って食べてしまうと数日後突然死するとか。更には、その死体には数時間感染型の毒が巡るとの事。店主の説明にへぇと相槌を打ち、刺青のあるエースの逞しい背中を見た。うぅん、エースが毒蜘蛛食べたくらいで死にそうに無い。
死人が出た！と店内は大騒ぎで、その騒ぎがあっという間に街へ広がり、いつの間にやら店の外には人だかりが出来ている。全く悪目立ちしすぎだ。ああもう。俺はため息をつく。
「ぷほ！！？」
「あ」
「うわ！生き返った！！」
起きた。此方の心配なんて露程も知らず、エースは頭上に疑問符を沢山浮かべ辺りを見回す。あろう事か隣にいた女性のロングスカートの裾を徐に掴むと、ご飯粒まみれの顔を拭った。きゃあと甲高い悲鳴が店内に響く。幾らなんでも他人の服で顔拭くなよ。俺は呆れ、頭を抱えた。
「ふぅ……参った寝てた。お？A、お前なんで離れた所にいるんだよ」
「……いや、別に？」
言葉を濁すとなんだよそれ。なんて笑いながら、食事を再開する。周りの人の視線が痛いがあえて気付かない振りをして、エースの隣に座る。
「ところでおやっさん、こんな奴がこの街に来なかったか？麦わら帽子をかぶった――」
「よくもぬけぬけと大衆の面前でメシが食べられるもんだな。"白ひげ海賊団"の二番隊隊長が何の用だ"ポートガス・D・エース"」
質問の途中で男の声が割り込んできた。途端にどよめく店内に俺は面倒ごとの気配を感じつつも振り返った。白い髪に葉巻を咥えた男の姿は見覚えがあった。眉間にこれでもかというくらいにシワを寄せ、こちらを睨む鋭い眼光に萎縮してしまいそうだ。
「……弟をね、探してんだ」
男の恐ろしい射抜くような視線も物ともせず、エースはにまりと笑って答えた。
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作者名：1 | 作成日時：2021年3月22日 3時
