過去を思い出す。02 ページ39
「そういやA、さっきもそう言ってたよな！空島はあるんだって！」
手当てが終わったルフィはぴょこんと立ち上がる。目の下には絆創膏が張られている。出血量が多くて心配だったがルフィはAが思っている以上に頑丈なようだ。
「だって俺、白ひげ海賊団に拾われるずーっと前は空島にいたから」
にっこりと笑って言うと、ロビンを除く全員が驚愕し口をぽっかりと開けた。
「「えぇっ！？」」
「凄い息ぴったりだな」
表情も同じなら、声を発するタイミングも同じだ。真っ先に我に返ったナミが疑うような眼差しで本当に？と念押ししてくる。Aはそれに大きく頷き答えた。
「本当だよ。何なら何があったか教えるけど……」
「それはいいや。楽しみがなくなる」
「そうか」
ぶんぶんと首を横に振るルフィにAは笑う。ウソップやナミはAの話を聞きたそうにしていたが、船長が要らないと言ってしまったからには仕方ない。
「じゃあなんでAは空島から降りてきたんだ？」
ひく、と顔が引きつった。多分ウソップは当たりさわりのない素朴な疑問を尋ねたつもりなんだろう。思い出すのはエネルの事だ。エネルは何だかんだで俺に優しかった。あの日までは。
崩れ落ちるビルカと身体に走った落雷の痛みはもうはっきりと思い出せないけれど、あの日味わった死の恐怖は今でも思い出せる。
「……友人に落とされたんだ。もう、要らないって」
困ったように小さく笑って言うと、全員が息を呑んだ。青空に浮かぶ白い雲に手を伸ばしながら、Aは目を細める。エネルは今も空島にいるんだろう。何をしているのかな。本を読んでリンゴを食べてるのかな。そんな想像してからAは緩く頭を振り諦めたように目を伏せた。
友人、というと何だか変な気持ちになるが、でもAとエネルの関係は友達同士だった。少なくともAはそう思っている。……エネルがどう考えていたかは、知らないけれど。
「その時はさ、悪魔の実を食べてたけどそんな事全然知らなくて……そのまま海に落ちかけたんだよねー……」
ギリギリのところで翼が生えて助かったんだけど。辛気臭い空気を入れ替えるために、笑顔を努めながらおちゃらける。いや、笑い事じゃないぞ、それ。とウソップがすかさず突っ込んだ。
(助かった、というべきなのか、その後は――……)
内心でため息を吐き、嫌な思い出を頭の中から追い払った。
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作者名：1 | 作成日時：2021年3月22日 3時
