目覚め。01 ページ10
ゆらゆらと揺れる感覚と身体の節々に走る激痛に俺は目を覚ました。身体が重いし、全身はべたべた。髪の毛も海水でぱさぱさになっている。
「気分わる……」
身体を起こそうとしてから気がついた。手が上手く動かせない。首を動かして手元を見ると、手錠が掛けられていた。
手錠には鎖が付けられており、鎖の先は黒くて重たそうな鉄球が取り付けられている。起き抜けの頭ではその事態をさっぱり理解できず、俺は首をかしげた。
「どこ、此処?」
辺りを見回した。木目の壁が四面に広がっている。何処かは分からないが、取り合えず空島ではないはずだ。青海に落ちた所までは覚えている。なら心優しい誰かがわざわざ海から助け出してくれたのか。いや待てならどうして、こんな手錠があるんだ。怪我の手当てもされていない上、手錠なんて。
「……逃げた方が良さげ……か?」
意識が漸くハッキリしてきた。もしかしなくても、危険なんじゃないだろうか、ここ。
よっこいせ、と足だけで立ち上がり、鉄球を足で転がしながら扉の方へ近づいた。下品な笑い声がが扉の向こうから聞こえてくる。向こう側に誰かいるようだ。
「いい拾い物をしやしたねぇ、お頭!」
「ぎゃはははそうだなぁ!ありゃあ能力者だ。間違いねぇ!」
お頭、拾い物、能力者。気になる単語を聞き取り、俺は口元を押さえて考え込む。お頭ってのは良く分からないが、拾い物っていうのはもしかしなくとも俺の事だろう。
能力者。拾い物が、能力者――俺が、能力者?
――ギシッ、
鉄球が床板を軋ませた。まずいと思った時には遅かった。目の前の扉が勢いよく開けられ、いやらしく笑う男が此方を見下ろしていた。
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作者名:1 | 作成日時:2021年3月19日 20時