神との別れ。02 ページ9
大笑いしながら島を壊すエネルは異常だった。
「まだ…人がいたんだろ…何人も!何百人も!!」
「私に口答えするのか?」
我は神だ。人を生かすも殺すも私次第。当然のようにそう言ったエネルに俺の中のどこかが切れた。
「神?ふざけんなよ…そんなのねぇよ!島を壊して人を殺して何が神だよ!」
突然掴んでいた手がエネルの身体をすり抜けた。エネルが自らの身体を雷へと変えたのだ。エネルという浮力を失った俺は当然、重力に引っ張られる。何もできないまま俺は青い海へと一直線に向かっていく。
「貴様への興味が失せた。もういい、死ね」
エネルの手が落下する俺の方へと向けられた。
青白い稲妻が落ちる。
「あ"あ"あ"!!」
全身に焼けるような激痛が走り、悲鳴を上げた。口の中まで焼けつく。ぼやけた視界で見えたのは、既に遠くなったエネルの背中だった。
「ぅ…」
エネルの雷を食らってもなお意識はあった。しかし身体は痺れ、満足に動かせない。このままでは海面に叩きつけられて木っ端微塵になる。辺りを見回せど何も無い。自分の身一つで、自由落下。
風の音が耳元で鳴り続ける。そんな時、海鳥が飛んでいくのが視界の端に見えた。
「とり…はねがあれば…」
俺にも羽があればいいのに。そうすれば、この窮地も脱出できるかもしれない。両手を広げ、翼のように羽ばたかせるが大した意味は無い上、身体がずきりと痛んだだけだった。
死ぬのか、俺。
全身で風を受け止めながら、遥か下の海面を見つめる。徐々に近づいてくる命の終わりに身体が震えた。100%の死が目の前に突きつけられて正常でいられる訳が無かった。
「だれか……誰か、助けて!」
空中で頭を抱え、悲鳴を上げる。助けて助けて、誰でもいい。落ちて落ちて堕ちて行く。
海面まであとわずか50メートルを切った。
「いやだぁあ!」
悲鳴と共に背中に痛みが走った。めきめきと何かが飛び出した。それは強くはためき、落下速度を緩める。
「え…?」
落下速度が突然緩まった事にぽかんとして自分の背中を見ようとしたが、それと同時に着水した。どぷん。海水に全身が濡れる。足を動かし何とか泳ごうとするも、どうしてか身体はまるで重りをつけたように下へ下へと沈んでいく。
海面があっという間に遠くなる。息が出来ない。苦しい。
Aは必死に息を止めるも、努力虚しく口から大量の泡が吹き出した。空気の代わりに口の中へ海水が押し寄せる。
俺の意識は一瞬にして暗闇の中へと放り込まれた。
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作者名:1 | 作成日時:2021年3月19日 20時