激マズ木の実。02 ページ7
「……木の実？」
形はパイナップルだ。色は実の部分が赤、葉の部分が黄色という妙な色合いだった。海に揺られていたようだが、腐食したような所は見受けられない。
空島にはコナッシュやAが見た事もないような木の実があるから、これもきっと空島の木の実なのだろう。木の実に突き刺さった釣り針を丁寧に抜き、俺は木の実をしげしげと眺めた。
お昼ごはんを食べていないから、お腹が空いている。社へ戻るのは時間が掛かるし、丁度いい。この木の実を食べるとしよう。
「んー……皮は、流石に食べられなさそうだな……」
ごつごつとした皮は少々硬く、分厚い。リンゴのように皮ごと食べれそうには見えない。
ナイフなんて持っていないため、Aはそのまま齧りつき、皮を引き千切った。
皮は見事な赤色だったが、中はマンゴーのようなオレンジ色をしていた。
おいしそうなそれに俺はごくりと唾を飲み込み、その果肉へと齧り付く。
じわりと口内に広がるのは甘み――ではなかった。
「うぐへっ！？」
今までに食べた事もない強烈な味だった。
ゴーヤの数倍の苦味にレモンとハバネロを加えたような。とにかく酷い味だ。
舌先が痺れ、何とか一口は飲み込んだものの、これ以上は食べたくもなかった。
木の実を海へと投げ捨て、俺は口元を押さえてぶるぶると震える。
「にがっ、まずっ！何あれっ！」
あんなに美味しそうな色だったのに。くそ、騙された。
心の中で悪態をつきながら、俺は小さく息を吐き出す。知識も無く下手に齧り付くんじゃなかった。唾を何度も飲み込むと徐々に苦味が消えていく。舌先の痺れもなくなってきた。
魚も逃げてしまうし、変な木の実に当たるし散々だ。これ以上釣りをする気分じゃなくなった。はぁとため息を吐き出して竿を掴み、器を抱えると社へ戻ることにした。
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作者名：1 | 作成日時：2021年3月19日 20時
