ドラグーンの憂鬱 (ページ39)

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ティーチと。01 ページ39

まだこの船での生活は慣れない。揺れる感覚に酔わなくはなったが。対人恐怖症だからと船員も挨拶はしてくれるが、あまり近づいてこない。気にしてくれるのは嬉しいけれど、少々淋しくもある。

一人でご飯をつつきながら、俺は小さくため息を吐いた。俺のテーブルの空いた席に人はいない。周りは騒がしいのに、俺のところは静かだ。対人恐怖症といっても面と向かって喋れないほど重度ではない。触れられたりするのが怖いだけで俺だって人と会話したい。

「はぁ……」

「よう！新入り、辛気臭ェため息吐いてるなァ！」

ゼハハ、と変な笑い声を上げて、俺の向かいに腰を下ろしたのは無精ひげを生やした大きな男だ。癖毛なのか肩ほどまである髪の毛はくねくねとうねっている。

「あ……ど、どうも……」

大男の名前が分からなかったため、俺は曖昧に返事をして軽く頭を下げた。Aの反応に男は気を悪くした様子もなく、特徴的な笑い声を上げながらプレートに山盛り乗せられたパンを頬張っている。

「俺ァティーチってんだ！よろしくなァ、A！」

「あ、はい、よろしくお願いします。ティーチさん」

食べる手を止め、挨拶をする。ティーチ、さん。心の中で復唱するのも忘れない。堅苦しいそれにティーチさんは目をぱちくりさせた。

「"さん"なんてガラじゃねェ！ティーチでいいぜェ！その口調もいらねェな！」

「は――あ、うん、よろしく、ティーチ」

言い直し、再度挨拶をするとティーチはにかと歯を見せて満足そうに笑った。歯が数本抜けていた。