騒いで飲んで。01 ページ33
船に荷物を置きに行った頃には既に日は水平線の向こうに沈んでいた。代わりに青白い月が空に浮かんでいる。ぎゃあぎゃあと騒がしい仲間達をカウンター席で眺める。
ここは居酒屋。
夕飯も兼ねていたのだが、大半が酒酒酒で夕飯も食べないうちに船員の半分以上はすでに出来上がっている。かくいう俺は酒なんて飲めないというか飲んだ事もないため、夕飯の肉を突っつきながらグレープジュースを啜っていた。
新品の衣服に身を包み、俺は俺なりに、のんびりと楽しんでいる。
肩を組み、歌を歌っている名も知らぬ船員を横目で見つつ俺は口元を上げる。
「よ！飲んでるか！？」
少しばかり頬を赤くしたエースがジョッキを片手に俺の隣に座ってきた。むっと漂ってきた酒の臭いに俺は酔いそうになりつつも、グレープジュースの入ったグラスをエースの前で揺らしてみせる。
「んー？ジュースかよ！酒飲めよ！酒！」
「お酒は苦手ってか、飲んだこと無い、から……」
飲んだこと無いというと、エースは目を丸くして驚く。お酒は二十歳になってからという法律が染み付いているため、飲めといわれても素直にうんと言えない。こちらにそんな法律があるのかは知らないし、そもそも海賊は無法者だからそんな事気にしないのだろう。
「んじゃー初酒だな！飲めよ！」
「え"」
エースが持っていたジョッキを俺に強引に手渡してくる。むわっと酒の臭いが鼻腔を擽る。その独特な臭いにAは顔を顰めた。
「ほら、飲めって美味いぞ」
「お！ひょろっこいのが酒飲むってよ！」
「一杯で潰れっちまうんじゃないか！ハハハ！」
促されたうえ、俺とエースの会話を聞いていたらしいすぐそばのテーブルの船員二人がはやし立ててくる。飲まずにはいられない状況になってきた。
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作者名：1 | 作成日時：2021年3月19日 20時
