怯え。02 side:Marco ページ20
「お前を傷付ける奴は此処にはいないよい、だから顔を上げてくれよい」
――パシッ
「……っ、ごめんなさいごめんなさい」
伸ばした手は弾き飛ばされた。大して痛くは無かったが少し赤らんだ俺の手に、少年は目を見開き顔を真っ青にさせて再び謝罪する。
「もど、もどるから……、許して……」
「落ち着けよい――っ!?」
少年の身体が変化した。めきめきと音を立てて、背からは蝙蝠のような翼が生える。尾が生え、首は伸び、その身体は鱗で覆われていた。額には鱗と同じ色の鋭い角がある。純白のドラゴンだった。急激に大きくなった身体に、包帯が千切れ床に落ちる。
明らかに重量オーバーぎりぎりのベッドがみしみしと音を立てるのが聞こえたが、それを気にする余裕はマルコに無かった。
「……能力者かよい」
部下が拾った空から降ってきた少年は能力者だった。それも動物系でも珍しい実自体が幻獣であるドラドラの実、モデルは白龍、ってとこだろう。ドラゴンになった少年は怯えた目で此方を見つめている。
後頭部をぼりぼりと掻き、マルコは面倒ごとの臭いに小さく息を吐き出した。
「おい、とりあえず人型に戻ってくれよい。それじゃあ話も出来ねぇ」
しかし、少年は一向に人型に戻る気配を見せない。ドラゴンの姿のままで身体を震わせている。先ほど彼は"勝手に戻ってごめんなさい"と言っていたからずっとドラゴンの姿でいるように強要されていたのだろう。だから、その逆の人型に戻れという言葉に従わない。どうしたものか。マルコは悩んだ末に少年へ声を掛けた。
「あ〜……もうそのままでいいから、ついて来いよい」
ともかく少年が目を覚ましたのならば親父に報告しなければならない。親父ならばこの状態の少年も何とかしてくれるに違いない。親父――白ひげ海賊団の船長である彼ならば。
ついてくるよう促すと少年はその姿のまま緩慢な動きでベッドから降り、マルコの後を恐る恐るという風についてきた。
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作者名:1 | 作成日時:2021年3月19日 20時