絶望の日々。03 ページ15
相変わらずお腹はペコペコだった。海賊たちの残した少しばかりのご飯を大きな口でかみ締める。かれこれ三日ぶりのご飯だった。骨をごりごりと噛み砕きながら、俺は遥か遠くを眺めた。周囲に広がるのは真っ青な海と空。島の影はまったく見えない。
どうせ、島にたどり着いたところで、俺は上陸させてもらえないが、船員がいなくなるので気は幾らか落ち着く。安眠できるのは彼らがいない時だけだ。
「船長！二時の方角に敵影が！！」
頭上から声が聞こえてきた。のそのそと顔を上げると見張り台に上っていた男が血相を変えている。それと同時にドォンという大きな音がして船が揺れた。ぼんやりしていた俺は突然の揺れにメインマストに思い切り頭をぶつけてしまった。
痛みに身悶えながら、二時の方角を見る。真っ直ぐに此方に向かってくる船が一隻。船の天辺には髑髏のマークが掲げられている。つまり、海賊船だ。此方の船よりもあちらの方が一回り大きい。
「よし！野郎共！やっちまえ！」
船長の掛け声でおぉ！と船員が雄たけびを上げそれぞれの持ち場へ掛けていく。ドォンドォンと大砲の打ち合いが始まり、砲弾が幾つも飛び交った。海へと沈むのもあれば船体に直撃したのもある。
ぐらぐらと危なっかしく揺れる船の甲板で俺は隠れる事も逃げる事も出来ず、身体を丸めて出来る限り小さくした。終わるなら早く終われ。そしてあわよくば俺を殺してくれ。淡い願いを胸に、俺は目を硬く閉じる。
「ドラゴン！？こいつら、いつの間にこんなものを…！」
「怯むな！敵の殲滅に集中しろ！」
聞き覚えの無い男達の声に俺は薄く瞼を上げた。どうやら敵船の男達が此方の船へと移ってきたらしい。皆一様に青いバンダナを頭や腰に巻いている。短くて太い剣を振りかざし、此方の船員も応戦するが相手の方が一枚上手のようだ。
金属の音と、重い物が落ちる鈍い音。数分のうちに甲板は赤色に染まった。鼻に突き刺さる濃い鉄の匂いにAは身体を硬くする。
「くそっ！無名の海賊団のくせに…！」
「無名？俺らはサウスブルーじゃ有名な海賊なんだぜ？」
船長が敵船の男に剣を突きつけられている。少しでも男が動けば間違いなく船長は頭と胴体が離れ離れになるだろう。助けようとは微塵も思わなかった。そんな気力も度胸も俺にはなかった。
「ドラゴンなんて珍しい生き物を飼ってるとは思わなかったけどな」
「あれは俺達が引き取ってやるよ」
「黙れ！あれは俺のだ！誰がお前らにやるか！死ね！」
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作者名：1 | 作成日時：2021年3月19日 20時
