目覚め。02 ページ11
にやりと下卑た笑みが俺を見下す。
「お頭、こいつ目を覚ましやがりましたぜ！」
「よし、こっちゃ連れて来い！」
「いづっ！？」
前髪を引っ張られ、俺はそのままずるずると引きずられてもう一人の男の前に投げ飛ばされた。鉄球が二、三度バウンドしてがんがんとけたたましい音を立てた。
お頭らしきその男は金色の髭を摩りながらにやにやと笑って俺を見下ろしている。明らかに人を見る目ではないそれに俺は眉間に皺を寄せ、その男を睨んだ。
「生意気な目ェしやがって、このっ！」
「う、あっ！」
顔面を思い切り踏みつけられた。一度だけではない。何度も何度も鼻が折れるのではないかと思うほどに、強く。
腕を拘束されているため、顔をかばう事も出来ず、されるがままに痛め付けられて俺は呻く。
痛い。止めてくれ。逃げたい。
そう思った瞬間、背中に違和感を覚えた。
「うおぉお！すげェ、羽が生えた！」
は……ね？
男の歓声に疑問を浮かべながら、俺はそろそろと顔を背中へ向けて、目を丸くした。蝙蝠の羽のようなものが、確かに俺の背中から生えている。
「動物系の能力者か……てめぇ何の動物だ？」
「ぞおん？何……それ、」
男の言っている言葉の意味が分からない。床に転がったまま俺は聞き返す。
「あぁ？何の悪魔の実を食ったか聞いてんだよ」
がつんと顔を蹴られ、面倒そうに言われた。
また新たな単語が出てきた。悪魔の実なんて、俺は知らない。だが、聞き返せばまた蹴られそうだ。
痛みのせいで上手く頭が働かない。このまま瞼を落としてしまえたらどれだけ楽なんだろう。
「黙ってちゃ分からねぇだろうが！とっとと答えろ！」
「――……っ！」
今度は腹部を蹴られた。
胃の中の何かがせり上がってくる感覚に俺は必死に耐える。答えろって言ったって分からないんだから答えようが無い。理不尽な暴力に俺はどうする事も出来ず、ただただ歯を食いしばり痛みを堪える。
「お頭〜、痛めつけて強引に能力を発動させるってのはどうです？」
「そりゃあいい案だな……」
よし。男は言うと、腰に携えていた物を抜いた。銀色のきらめきが俺の視界の端で見えた――剣だ。
「……ぁ、あ……」
人を殺すために作られた鋭利なそれを見て、俺は痛む身体を引きずり、何とか男から逃げようとする。しかし手錠に付けられた鉄球のせいでその場から殆ど動く事が出来なかった。
汚らわしい嫌な笑みを浮かべ男はゆっくりと俺に近づき、そして剣を振り上げた。
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作者名：1 | 作成日時：2021年3月19日 20時
