1話 ページ32
「ていう夢を見てよぉ」
『黄金ってことは、グリス?』
「いやぁ、グリスじゃなかったんだよ。なんだったんだろうな」
研究に没頭している戦兎を横目に私は首を傾げた。
龍我がどうした?と聞いてきて、私は口を開いた。
『戦兎はジーニアスでしょ?』
「あ?何が?」
『龍我はクローズマグマで、一海はパーフェクトキングダム…で、幻さんがプライムローグ』
「俺達の現時点最強フォームの名前を上げてたんだな。それがどうした?」
顔を上げた戦兎が私に目を向けながらゴーグルを外した。
『私は?』
「え?」
『私も強化アイテムが欲しい!!』
突然現れた衝動。
私だけ何もなしでここまで来ていることに気づき、パワーアップしたいという衝動に駆られていた。
「いやいや、お前は変身してまだ間もなかったし、それにグレートマッチ単体で強かっただろ」
「それに、もう必要ないしな。今は平和なんだからよ」
平和に越したことはない。
確かにそうなんだけどさ…みんなばっかりどんどん強くなっていってる気がして、自分の力じゃ追いつけなくなったりするのかなって思ったりする。
「なんでAはここに入り浸ってるんだ?仕事は?」
『今日は同僚におまかせして有給取った。龍我とデートするためにね』
「ここはデートスポットじゃねぇよ」
『龍我に言ってよ、ここに連れてきたのは龍我なんだから』
「だってよ、外に出たら色々とあるだろ……この世界の俺とかと会った時なんて言うんだよ」
「そこは、よっ!俺!みたいな」
「フランクすぎだろ!」
要するに、いざこざが起こらないようにここを今日のデートスポットにしようとしているらしい。
色気の欠片も無い。
『戦兎ー、なんか手伝おうか?』
「じゃあ、ここなんだけど……」
「それは違ぇだろ!」
椅子のキャスターを滑らせて戦兎の隣に行くと、龍我が立ち上がって止めてきた。
龍我の後ろにあったホワイトパネルが光る。
『なに?』
「……警告?危険を知らせてるのか?」
「危険ってなんだよ」
疑念を抱く私達の耳に、突然爆発音が聞こえた。
それはテレビの中から聞こえていて、映像にもくもくと黒い煙が映る。
黒い煙に雷のようなものが現れて、煙を巻き上げその姿を現した。
「よぉ……久しぶりだな」
「エボルト…!」
テレビから聞こえるエボルトの笑い声に、私達はふつふつと怒りが込み上げてきていた。
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作者名:Non | 作成日時:2020年8月8日 18時