NEW WORLD (ページ29)

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12話ページ29

どこからか一海の声が聞こえた気がして、戦兎の顔を見た。
今頃一海が三羽ガラスの生存確認を終えた頃なんだろうと、ニヤニヤしている。

「分かってないなぁ、それだけあのアイテムを使いこなすのは難しいってことでしょうが」

『3人が死んだと思わせる演技、龍我上手かったのね』

「戦兎に言われた通りやっただけだぞ！」

「でも、万事解決して良かったね」

「葛城巧も政府の研究機関に復帰したそうだ。今回の一件で葛城先生も戦争の責任を深く受け止めて、あいつに謝罪したそうだ」

「良かった…やっぱり親子は仲良くないと」

戦兎はそう言って安堵の笑みを浮かべた。

「…いや待てよ？A、お前エボルドライバーどっから手に入れたんだよ」

『あー、あれ？あれはねぇ…作った』

「はぁ？」

『旧世界の記憶が戻った私に不可能はないってこと！』

「ほんとかよ…戦兎でも組み立てるのでやっとだったのによ」

龍我に痛いところをつかれて苦笑いしてしまう。

『いやいや…それより幻さん、ヒゲは？』

「剃ったほうがいいって言われて」

「誰に？ってかさ、なんでダウンフォールに襲われた時に紗羽さんに連絡したんだよ？普通だったら俺に連絡よこすでしょ？」

『確かに…なんで？』

幻さんはジャケットのチャックを開けながら紗羽さんに近づく。
えっ…まさか？

「答えは簡単だ。俺達…」

紗羽さんも上着のボタンを開けてTシャツを見せてくる。

「ホテルで朝まで」「語り明かしたってよ♡」

なんて書かれていたら、もう完全にお察しの通りだ。

「2人付き合ってたの？」

「ねぇー幻さん」

「ねぇー紗羽たん」

イチャイチャしている紗羽さん達に私達は顔を合わせていると、今度は目の前に内海さんが鉄の棒を持って現れた。

「内海さんいつからいたの？」

『スーツ姿じゃないから完全に溶け込んでたね』

「旧世界で私をサイボーグにしておきながら、そんな幸せを手に入れていたとは。えぇい！」

内海さんは鉄の棒を太ももにぶつけた。

「痛っ！痛い！」

『そりゃサイボーグじゃないから…』

「あっ！折れてない！さすがは難波スティック改だ！」

改良してたんだ。
私はそんな内海さんを横目にこそこそと龍我の隣に行って耳打ちした。

『たまにはそっちからデート誘ってくれてもいいんじゃなぁい？』

「あ！？…今度の日曜な」

「堂々とデートの約束してんじゃないよ」

照れ隠しのように大きい声を出した龍我のせいで戦兎に突っ込まれてしまった。