後輩女子的。chapter3【Dr.STONE】 (ページ9)

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データ98 ページ9

『好き』

千空「…………は？」

『ん？どうしました？』

千空「お前…今なんて……」

『今？え……私、今………………！！』

胸に釘を打たれたような衝撃が千空に走る。唐突かつ無意識の内に目の前にいる後輩の口から出ていた言葉。発した本人はきょとんとした顔で首を傾げているが、彼の脳がその意味を理解するのに時間はかからなかった。
千空の驚いた表情を見たからか、Aは自分の言葉を振り返る。そしてとんでもないことを口走っていたことに気づき、慌てて手を口元に持っていっておさえる。だが駟馬も追うに能わずという諺があるように、口から出てしまった言葉にはどんなに速い馬だろうが追いつけない。なかったことにはできない。Aは小さく息を吸い、小さく息を吐いた。

『好きです先輩！』

千空「……！」

1度まぶたを閉じ、今度は真っ直ぐガーネットの方へほんのすこし熱を孕んだ瞳を向ける。影を落としていたまつ毛が上を向き、アメジストを思わせる瞳が再びその紫を覗かせれば自然と視線は絡まる。その柔らかい眼差しが愛しさを含んでいると千空はきづいた、気づいてしまった。彼女の赤い唇が弧を描き、その頬がわずかに色づく。その瞳が緩く細められたところで、千空はようやく視線を逸らすことが出来た。

千空「てめぇ……開き直りやがったな」

『えへへ〜それだけです。じゃあおやすみなさい！』

千空「あ？……っておい！」

動き始めていた後輩の方に手を伸ばすも、呼び止める前に天文台を出ていってしまった。
あまりにも俊敏な動きに今迄の出来事は嘘だったのではないかと思えてしまう。どこかふわふわした気持ちを必死に抑える。だがモバイル機器が画面焼けしたみたいにあの柔らかい紫苑の色が瞼の裏に焼き付いて離れてくれない。彼女の綺麗に三日月を描いた唇、恒星アンタレスと同じ色に染まった頬まで全て思い出せてしまう。告白された時よりもその後の愛しいを詰め込んだような表情を脳が、彼自身が覚えてしまった。

千空「(とんだプレゼント置いていきやがった)」

舌を動かすと、口の飴が軽い音を鳴らす。そういえば食べている途中だったな。よく飲み込まなかったもんだ。額に手を持っていくと、瑞風が優しく彼の頬を撫でる。千空はまだ形を保っていた飴を強く噛み砕くと、ひとり大きな溜息をついた。

千空「はぁああ………」

そして小さく乾いた笑いを零した。