４章ー３ ページ40
集落はすっかり喧騒を無くしたが、そのうち遺体も血生臭さもすっかり元通りになり、いずれまた人が住めるようになるだろう。家屋への損傷が少なかったことが救いだ。そんなことをひとり考えながら応急手当をしていると、そばに寄ってきたレクトが隣に腰を下ろした。そしてじっと傷を見つめた後、眉を垂れ下げながら口を開いた。
「最近、調子が悪そうですね」
確信を得ているような言い回しに、わたしは思わず口を噤んだ。近いうちに彼から触れられるとは思っていたが、適当に誤摩化せるだろうと鷹を括っていたのだ。だからこそ、否定を許さない彼の様子に何も返すことが出来なかった。理由は自分でも分かりきっているのだが、肯定するわけにもいかない。公私混同している私が悪いのだから。
すべての不調は、彼ーーグルッペンの名を見つけた時からだった。逃げていた真実を目の当たりにして、日常のふとした時に彼の事が頭を過ぎる。今まではほとんど思い出すこともなかったのに、だ。おかげでその日から仕事が手に付かず効率が低下し、比例して睡眠も不足しがちになっている。それでもまだわたしは逃げ続けているのだから、本当に笑えない。
「何か悩み事でもあるのなら、聞きますが」
「･･･いや、大丈夫。最近忙しかったから、疲れてるのかもしれない」
「そうですか」
何が言いたげなレクトを見て見ぬ振りして、わたしは「さあ帰ろう」と立ち上がる。これ以上追求されれば、誤摩化せる気がしない。彼にも、自分自身にも。荷物を背負うと、腕がズキズキと痛んだ気がしたが、顔には出さずに止めておいた。レクトも私に続くように立ち上がるが、なおも心配そうな目でこちらを見つめている。その様子があまりにも健気で、同時に心が痛んだ。
やはり逃げ続けていられるのも時間の問題なのかもしれない。
「心配かけてごめんね。助けてくれてありがとう」
「･･･あまり無理はなさらないように」
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
