３章−２２ ページ30
「他には？何が好き？」
「スイーツ、とか」
「女の子らしいね。そういえば、この間ドライフルーツを持って帰ってくれたんだっけ」
「うん。･･･その、あなたが果物とか畜産物を卸してるケーキ屋さんに行って。とても美味しかった」
「ああ、なるほど。だからあの時俺のことを知ってたんだ」
ひとらんさんは合点がいったようで、大きく頷く。少し照れくさそうに「ありがとう」とこめかみを掻いたあと、一呼吸置いて彼はまた口を開いた。
「話は変わるけど俺はさ、最初から国に仕えようだなんて考えてなかったんだよね」
「･･･うん」
「正直、彼らに出会ってなかったら俺はここにはいなかった。もしかしたら、田舎でまったり農業や酪農に勤しんでるかもしれない。でも縁があって、付いて行きたいと思える人に出会って、今の俺がいる」
まあ、好きなことばっかりさせてもらってるんだけど。と笑うひとらんさんが、わたしには少し眩しく見えた。そして同時に羨ましい、とも思えた。
必死に勉強して、訓練を積んで、一等官という地位を手に入れて。現状に不満などないと言うのに、どうして頭の中をぐるぐると掻き回されるような気分になるのか。
「どうして、わたしに？」
「悩んでる･･･とは少し違うな。君が迷っているように見えたから」
「迷ってる？」
「勘違いだったらごめんね」
指摘されて、わたしは黙り込む。今の生活を手に入れるまで、迷ったことなんて一度もない。ただひたすらにまっすぐ、目標に向かって歩き続けてきた。「･･･ひとらんさん、わたしは地位のためにここにいるの」と声に出してみて、はたと気付く。わたしが欲しかったものは、本当に地位だったのか。
「･･･ううん、違う」
力を付けなければいけない。だからわたしは一等官まで上り詰めた。でも考えてみれば、それは通過点に過ぎなかった。
「会いたい人がいるの。それがわたしがここにいる理由」
すとんと胸に降りてきた答えは、思ったよりも簡単に受け入れられた。いや、霧が掛かっていただけで、最初からそこにあったのかもしれない。
ひとらんさんは「早く会えるといいね」と笑った。
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
