３章ー１６ ページ24
「相手はどなたですか？」
「…、我々国のオスマン外交官様です」
「……」
「そ、それからひとらんらん樣という方もご一緒です」
「……なるほど」
質問を投げかけると、サンドラは一瞬間を置いて、話すのを躊躇うかのような素振りを見せた後、自信なさげに言葉を落とした。彼女の口から出たのは、つい先日聞いたばかりの名前だった。予想外の来訪者にわたしは言葉が出ず、私室には沈黙が落とされた。
その名前を聞いた後だと、サンドラの不安げな態度にも頷ける。国としても個人的にも、あまり直接的には関わり合いたくない相手であるのは間違いない。最近勢力を付け急成長している国家の第一外交官であり幹部の人間相手に強気に出れる者がいたら見てみたいものだ。少なくとも大国ではない我が国でお目にかかることは叶わないだろう。
たしかに、先日城内を案内するといった約束をしたような気がしないでもない。というかあれは半ば強制的であったし、まさかこんなすぐに行動に移してくるなんて誰が予想できただろう。せめて、あらかじめ連絡を寄越してくれれば心の準備が出来たというのに。わたしの連絡先を知っている幹部は少なからず何名かいるのだし、恐らくそのことはオスマン様だって分かっているはずだ。……何も知らされなかったのが故意だとするなら、質が悪い。
頭を抱えたくなるのを抑え、わたしは小さく息を吐いた。腹を括るしかないのだろう。わたしは手に持っていた筆をデスクに置くと、ハンガーラックから上着を一枚取り出した。最近は執務ばかりだったとはいえ、身なりは整えておいて良かった。
「……直ぐに向かいます。サンドラ、申し訳ないけど、今すぐキッチンに洋菓子と紅茶を用意するようにお願いしてもらえますか？」
「は、はい、お任せください！」
バタバタと慌てて退室したサンドラを見送ってから、わたしは改めて、先ほどよりも大きくため息をついた。胃痛がするのは、気のせいではないだろう。
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
