３章ー１４ ページ22
照れはしたものの、口から出るのは社交辞令に反応するようなあっさりとした言葉。折角上辺だけでなく褒めてくれたかもしれないというのに他に言葉が見つからなくて申し訳なく思っていると、ゾムさんは何に反応したのか、顔を沸騰したように真っ赤にさせていた。
「･･･な、何言うとんねん」
「え、ええ･･･？」
反応に戸惑っていると、ゾムさんは誤魔化すように何度か咳払いをする。頬は赤いままだ。すると、むすっとした表情の彼の視線がようやくこちらを捉え、上を向いた指を手招きをするようにくいくいと折り曲げた。
「ほら、よう見せて」
優し気な声色にたじろぎつつも、わたしは黙って彼の元へと歩みを進める。オスマン様と顔を合わせていた時のような、不遜な態度は何処へ行ったのかと問いたくなるほど、彼の機嫌はすっかり元に戻っている。
ゾムさんの前に立つと、改めて上から下まで細部まで観察するようにじっくりと眺められる。彼には寝起きの顔までばっちり見られてしまっているため今更至近距離で見られることに抵抗はないと思っていたが、着飾っている姿を見られるというのも案外気恥ずかしいらしい。だが、わたしが望んだことではないにしろドレスを贈ってもらった恩があるため、わたしは状況を甘んじて受け入れた。
「うん、かわええな」
「あ、あの･･･今日どうしたんですか。な、何度も言わなくったって伝わってます」
「照れる？」
「･･･そりゃあ」
そう言いながら、ゾムさんはわたしの髪を一房手に取って弄ぶ。なんだかいつもと違う彼の態度にそわそわとしながらも、わたしは窓縁に座っているせいでわずかに目線の低い位置にいる彼をただただ見つめた。
「･･････はー、自分で思ってたより、･･･面白くなかったらしいわ」
「･･･なにが？」
大きなため息をつくゾムさん。主語を言わずにぼかしているのは、わざとなのかそうでないのか。聞き返すが応えるつもりは毛頭ないようで、彼はわたしの言葉には反応を示さない。それから空いた方の手で顎を触りながら考える様な素振りを見せて、ちらりとこちらを見上げた。
「あのさあ、官吏辞めへん？」
「辞めないですけど」
「まあせやろな」
分かり切った答えに、ゾムさんも予想通りだったようでくつくつと笑う。突拍子のない発言の連続に、わたしは疑問符を浮かべる事しかできない。そんなわたしに彼はほんの少し眉を下げて、呟いた。
「ずっと平行線ってわけにはいかへんのやろなあ」
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
