３章ー１０ ページ18
ぐっと腰を引き寄せられ、思わず色気のない声を出してしまう。すぐ側を男女が通り過ぎるのを横目で確認して、わたしは頭幾つ分か上にあるオスマン様の顔を見上げた。注意が疎かになっていたわたしを単純に庇ってくれたらしい。
「･･･申し訳ございません」
「なにか、貴女の気を引くようなものがありましたか？」
「いいえ、」
すると、今度はオスマン様がじっと何かを見つめた後、わずかに肩をすくめるような仕草をする。視線の先に誰かが居るのだろうか？ひとらんらん様？そう思っても真後ろを振り返るわけにもいかず、ただじっとオスマン様を見つめた。だが、彼は特に何を言うでもなく、少し考える素振りを見せた後、口を開いた。
「まあ、おいたが過ぎると私も後が怖いですし、これくらいにしておきましょうか」
「･･･どういうことですか？」
「こちらへ。抜けましょう」
そういうや否や、オスマン様は私の手を引きながらするすると自然な動作でフロアを抜けていく。わたしは慌てながらも、なんとか彼に合わせて間を潜り抜けた。
離れた場所に出ると、手を引かれたままホールの隅へと誘導される。
「お相手ありがとございました。無理を言ってしまいましたか？」
「いいえそんなこと･･･光栄です」
漸く離れた手に、久しぶりに空気に触れたようなひやりとした感覚。わたしは胸の前で引かれていた方の指先を撫でながら、こちらを気遣うオスマン様に首を振った。
「ですが、少しぼんやりしているみたいです。奥で休まれてきては？」
「･･･すみません、でしたらここで失礼させていただきます」
「ああ、そこまで送りますよ」
「、…そこまでしていただく訳には」
ぼんやりしていたというのもゾムさんを探していただけで、疲労感はあるもののどこか調子が悪いと言うことはない。休んで来いというならそれを理由に彼の傍を離れ、仕事に戻るつもりだったのだ。実際に休むつもりなど到底ない。なのにオスマン様はそっと肩を抱いて、休憩室のある通路の方へと誘おうとする。
困惑しながら彼を見上げると、不意に顔が近付いてきて、わたしは肩をびくりとさせる。しかしその後耳元で囁かれた言葉に、わたしは大きく目を見開いた。
「貴女呼んでくるように言われています」
「…え？」
「安心してください。貴女も良く知っている方ですよ」
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
