３章ー６ ページ14
「はじめまして――オスマン外交官様。なにかお困りでしょうか」
「ああ、いえ、失礼。知り合いに似ていたものですから」
用意された台本通りの台詞を並べて、改めて恭しく頭を下げる。初めて聞いた声は予想よりも高く澄んでいて、そして彼もまた西国の訛りを残していた。
「そうでしたか、こちらこそ失礼しました」
「とんでもありません」
ふふ、と指先を口元に当てて柔らかく微笑むオスマン様はどこか女性的な雰囲気で。薄く開いた瞼の間からは、ゾムさんのものよりも僅かに深い色合いの緑が鈍く光っていた。すると、言葉を交わすわたしたちに気づいたらしいひとりの男が、オスマン様の背後からひょっこりと顔を出す。ビシッと着こなされた皺一つないスーツに短く整えられた黒髪。ファッションだろうか、一目を引く大きなバツ印が描かれたマスクをつけていた。付き人か、それとも幹部かと一瞬思考を巡らしたが、その特徴的な見た目や態度から察するに恐らく幹部だろう。じっと伺うような黒色に、わたしは再度小さく頭を下げた。
「あの、折角ですし少しお話でもいかがですか？…ご予定があるようでしたら無理にとは言いませんが」
「…勿論、わたしで良ければお相手いたします」
「本当ですか？ありがとうございます」
用件はないようだから早々に失礼させてもらおう、と考えていたわたしを引き止めるように口を開いたのはオスマン様だった。彼の方がよっぽど高身長だというのに控えめに見上げるような視線に、わたしは頭を縦に振らざるを得なかった。会場の見回りや部下の様子を確認したかったのはあるが、接客も仕事の内だ。出来れば精神が削られるような相手はうちの外交官に流してしまいたいのが本音だが、直々にお誘いを受けてしまったとあれば腹をくくるしかないだろう。
わたしは通りかかったウエイターを呼び止めると、彼らにドリンクを勧めた。トレイに乗せられた数種類のグラス中から、２人は迷うことなくワインを手に取る。適当に近くにあったものを手に取ったのかワインを好んでいるのかは分からないが、どちらワイングラスがよく似合っている。幹部連中は揃いも揃って容姿が整っているな、なんてぼんやりと考えながら、わたしも彼らと同じように同じようにワインを受け取った。
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
