間章ー１ 一抹の不安 ページ2
正午を少し過ぎた頃。
仕事を終え、すっかり習慣と化したリドラへの訪問も済ませ、我々へと帰国した俺は城門を潜った。前方には豪奢な正面玄関が構えているが、横道に逸れて監視塔へと入る。所謂、関係者入口である。とは言っても鍛錬所や居住区に直接繋がっているというだけでわざわざ監視塔を経由する必要はないのだが、なにせエントランスは客人やその他多くの官吏でごった返している。夜勤明けに面倒事に巻き込まれては敵わないので、こっそり裏口から入城するのが安牌だ。
監視塔を顔パスで通過して鍛錬所の裏へ出ると、喫煙所の方から覚えのある煙草の匂い。顔を出すと、どうやら指導の休憩中らしいシャオロンの姿がそこにあった。
「お、ゾムやんけ」
「ちっす」
「珍しいな、ここで会うなんて」
「今ちょうど帰ってきたとこやねん」
こちらに気付いたシャオロンは、灰皿に煙草を押しつけると壁に凭れ掛かっていた体を起こした。
「なるほど、お疲れさん。ちなみに聞くけど、それはどっちの話や」
「……どっちもや」
「ほんましょっちゅう行くなあ」
意味ありげに含み笑いをするシャオロンに、俺はこれ以上追及されまいと口をつぐむ。
彼女――Aを知る人間が幹部の中に増えてから、こうしてふとした時に彼女の話題が上ることが多くなった。そのほとんどが今のように偶然出くわしたときだったり、はたまた各々の私室で談話している最中だったりで、決して大勢の前では話さない。それが意図したものなのかは分からないが、それでも俺はいつでも肝が縮むような感覚がしていた。
それは、彼女と――グルッペンの間になんらかの繋がりがあるという可能性を認識したときからだ。子供じみた独占欲のような感情が自分の中で芽生えたのもその頃からだったかもしれない。玩具を盗られまいとするような所有欲と、身内に対する対抗心とが入り混じり、時々馬鹿げた主張をしたくなるのだ。
「……そういや、こないだこっち来てたんやってな」
Aといえば、ふと先日ロボロから聞いた話を思い出す。厳密に言えばロボロが大先生に話しているのを盗み聞きした話だが、細かいことはこの際いいだろう。「…あー」と曖昧に笑うシャオロンは、直ぐに何の話だか理解したらしい。
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遊麻(プロフ) - たこぱちょさん» コメントありがとうございます。応援本当に励みになります。スローペースではありますが必ず更新致しますので、引き続きよろしくお願い致します。 (2018年10月30日 10時) (
レス) id: 783499c5d1 (このIDを非表示/違反報告)
たこぱちょ(プロフ) - 本当に面白いのでゆっくりで良いので更新頑張ってください！ (2018年9月4日 17時) (レス) id: 6746a77822 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - kanonさん» コメントありがとうございます。想像以上にゾムさんが人気で恐縮です、出番までもう少しお待ちください！亀更新ですが頑張ります！ (2018年8月3日 1時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
kanon - ゾムさんかっこよすぎてちょっと叫びました(笑)更新待ってますね。頑張ってください！ (2018年7月11日 23時) (レス) id: e0a7914592 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - みんさん» 長らく更新していないのにコメントくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。亀更新になりますが、お楽しみいただけると幸いです。 (2018年5月24日 17時) (レス) id: 175c4c32e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年12月7日 16時
