２章ー２ ページ23
男はわたしのそんな様子を見てか、わずかに笑みを浮かべると腰を上げた。
「…ちょうど困ってたんで、助かります。…実は、僕違う国から旅行で遊びに来てるんですけど、あんまりこの辺詳しなくて。お姉さん、いいお店知ってはったりしません？」
「お店っていうと、美味しいご飯が食べられるところってことですか？」
「いんや、飯はもう済ませたんで、酒が飲めるところやなあ」
「ああ…ならあっちの方へ少し歩いたところに居酒屋が集中してる通りがあって、…そこならいくつか知ってます」
てっきり仕事帰りだとばかり思ったいたこの男性は、どうやら観光者らしい。
思い当たる居酒屋を頭に思い浮かべながら通りがあるほうを指さす。男は「ほんまか！」と歓喜し同じように指した方向へ目を向けるが、見えるのは人込みばかりだ。ちょうど一日の中で最も活気があふれるこの夕刻という時間帯、恐らく一人ではたどり着けないだろう。男もそれを悟ったのか、なにか言いたげにこちらを見つめた。わたしはその伺うような様子にくすりと笑みを零した。
「近くまで案内します。一緒に行きましょう」
「…おおきに」
男は申し訳なさそうに礼を言い、わたしたちは通りへと向かって歩き出した。
リドラ国で暮らし始めてそこそこ年月が経過しているわたしにとって、人込みなんて慣れたものだが、後ろを付いてくる男はそうではないらしい。振り返ると、行き交う人々にぶつかりそうになりながらも、なんとか置いていかれまいと前へ進む男の姿があった。その疲れた表情にかつて留学して来たばかりの頃の自分を思い出し、なんとなく懐かしさが蘇る。
最近はふと過去のことを思うことが多くなったような気がする。
わたしは追いついてきた男へと手を差し出す。彼はわたしの手と顔とを交互に見やると、きまりが悪そうに、ゆっくりと自身の手を重ねた。どこか掴んでおいてもらっても構わなかったのだけれど、この喧騒の中提案したところでうまく聞き取ってもらえるかわからない。手っ取り早く手を握らせることにしたのだが、抵抗がないようでよかった。
しっかりと握られた手は自分のそれより一回り大きく、しかし女性のように滑らかだった。だがところどころに固いマメの感触があり、自身と同じく剣を握っている者の手でもあった。職業が気になるところではあったけれど、非番の日くらいはあまり深く考えるのは止そう。
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aaaa(プロフ) - 遊麻さん» そうなんですね！焦らず、ゆっくり更新でいいので素敵な文章待ってます！ (2019年3月14日 16時) (
レス) id: 13526f236d (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - aaaaさん» こんにちは、コメントありがとうございます。執筆再開にあたって現在過去の文章を修正しているところでございます。応援とても励みになります。一刻も早く続きを執筆できるよう頑張りますのでよろしく願いいたします。 (2019年3月14日 9時) (レス) id: 196a2627e3 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - コメント失礼します。通知が来て、更新は停止しておりますが、戻ってくるの待ってます。続きがすごい楽しみです。これからも頑張ってください！ (2019年3月13日 11時) (レス) id: 81c6a91539 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - 氷弥さん» 初めまして。ご指摘ありがとうございます。今の今まで気付かなかったのもお恥ずかしい話なのですが、完全に誤字ですね。修正させていただきます。これからもよろしくお願い致します！ (2018年10月31日 2時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
氷弥(プロフ) - はじめまして！楽しく拝読させて頂いております！質問なのですが、1章-2の諺は意図的に言い方を変えているのですか？少し気になって質問してしまいました！意図的でしたら読解力不足で申し訳ないです (2018年10月10日 7時) (レス) id: 11d3565659 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年11月15日 14時
