１章ー１７ ページ17
呼ばれた名前に、わたしははっと目を見開いた。
どうやら夢を見ていたらしい。目の前には見慣れた天井と、それからこちらを覗き込む顔。寝起きで回転しない頭のまま、わたしはこちらを捉える二つの翠をじっと見つめた。長い沈黙の後、ようやく働きだした脳が目の前の存在を理解すると、わたしは声にならない悲鳴を上げてびくりと肩を跳ねさせた。
夢の余韻に浸る暇もない。どうして彼――ゾムさんがここにいるのか、いつからここにいたのか、何の目的があるのか。夢に現れた青年に呼ばれたものと錯覚していたが、よくよく思い返してみれば名前を呼んだのは彼の声だったかもしれない。疑問が脳裏に浮かび上がっては、言葉にならないまま消えていく。ばくばくと暴れる心臓を必死に抑えつけながら、わたしは大きく深呼吸をした。
「…あ、あの、なんで」
思考の読み取れない表情で黙り込むゾムさん。沈黙に耐え切れずにおずおずと口を開くと、重ねるようにして彼は話し出した。
「怖い夢でも見たん」
「…は、…えっと？」
「見てないん」
「…いや、夢は見ましたが、別に怖くはなかった、です」
ゾムさんは人ひとり眠るには広すぎるベッドの、枕元にしゃがみ込むようにしてこちらを覗き込んでくる。
前回の来訪から数日が経過したが、彼は本当に神出鬼没だ。確かに公の場で話すことが出来ないためアポをとることも不可能だが、だからといって突然私室に押しかけていい理由にはならない。こんな早朝に顔を出すということはまた任務帰りなのだろうが、いちいち驚かされるこちらの身にもなってもらいたい。
悶々としていると、ゾムさんはゆっくりとこちらに手を伸ばしてくる。反射的に目を瞑ると、こめかみのあたりをさらりと撫でられて、触れた体温はすぐに離れていった。彼の手を目で追うと、指先に付着した水のようなものが、重力により一滴落下する。そこでようやく、わたしは彼の問いの意味を理解した。身に覚えはないが、泣いていたのだろう。
「じゃあ、どんな夢？」
「…懐かしい夢を。あなたと先日、昔の話をしたからでしょうか」
「ほななんで泣いてるん」
「…そうですね、わたしにも分からないです。だからあまり気にしないでください」
笑みを浮かべるが、ゾムさんは納得していないのか難しい顔をしている。
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aaaa(プロフ) - 遊麻さん» そうなんですね！焦らず、ゆっくり更新でいいので素敵な文章待ってます！ (2019年3月14日 16時) (
レス) id: 13526f236d (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - aaaaさん» こんにちは、コメントありがとうございます。執筆再開にあたって現在過去の文章を修正しているところでございます。応援とても励みになります。一刻も早く続きを執筆できるよう頑張りますのでよろしく願いいたします。 (2019年3月14日 9時) (レス) id: 196a2627e3 (このIDを非表示/違反報告)
aaaa(プロフ) - コメント失礼します。通知が来て、更新は停止しておりますが、戻ってくるの待ってます。続きがすごい楽しみです。これからも頑張ってください！ (2019年3月13日 11時) (レス) id: 81c6a91539 (このIDを非表示/違反報告)
遊麻(プロフ) - 氷弥さん» 初めまして。ご指摘ありがとうございます。今の今まで気付かなかったのもお恥ずかしい話なのですが、完全に誤字ですね。修正させていただきます。これからもよろしくお願い致します！ (2018年10月31日 2時) (レス) id: bbd918f008 (このIDを非表示/違反報告)
氷弥(プロフ) - はじめまして！楽しく拝読させて頂いております！質問なのですが、1章-2の諺は意図的に言い方を変えているのですか？少し気になって質問してしまいました！意図的でしたら読解力不足で申し訳ないです (2018年10月10日 7時) (レス) id: 11d3565659 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遊麻 | 作成日時：2017年11月15日 14時
