第五十四話 昼休み ページ8
「見つけた」
愁「…朔晦」
詩音「今日はしっかり話を整理するわよ。今後の事も、よく考えなきゃ」
愁「Aと一緒ではないのかい？」
詩音「…今日はずっと避けられてるわ」
愁「…それで、何から整理するんだ？俺はもう、どうすればいいのかわからない」
詩音「誤解を解いて、Aに貴方の想いを伝えればいいのよ」
愁「…もし本当にAが俺との婚約を嫌がっていたら？」
詩音「その時はAと話せばいいわ。少なくとも今よりはずっとましになる筈よ」
愁「なら、朔晦も正直に言うのか？」
朔晦の目が曇る。
朔晦はいつも正しいことを言う。が、それは己の行いにも跳ね返ってくることをよく理解しての発言だ。Aも似ているが、Aは何故か中学に上がったあたりから、本当のことや正しいことを言わなくなった。
詩音「えぇ、言うわ」
愁「なら俺が直接誤解を解く必要はない。今俺が何を言っても無駄だろう」
やけになっていることは自分でも理解している。
自分がどうしたいのか、Aの気持ちを優先すべきかすら今は分からない。判断できる程の心の余裕がない。
詩音「…それじゃあ貴方が情けない男のままじゃない！Aの気持ちを勝手に想像して、自分が傷つくのを避けているようにしか見えないわよ？」
…情けない、か。
今まで容姿の良さと家柄の良さからそんな風に侮辱されることは無かった。だが確かに、今の俺を俯瞰して見れば、好きな女の子の気持ちがわからないと現状を顧みず、自分が傷つくことを恐れているだけの情けない男なのだろう。
ここまで自分が愚かな人間だったとは…。
詩音「…教科書。今日の分しか持ってこなかったのは、戻ってきて欲しいって意味で良いわよね？」
愁「・・・何故わかった？」
詩音「わかるわよ。私なら今日の日課も分からないから全部持って来るもの。でも、全部持ってきたら、まるで暫く戻ってくるなって言ってるみたいじゃない？」
その通りだった。だから、今日帰ってこなくても明日は明日の分の教科書を持って行く心算だ。
詩音「…今日の放課後、Aと話すわ。だから今夜にでも、Aの気持ちを本人に確かめて、自分の気持ちをAに伝えなさい！」
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作者名：ｉ | 作成日時：2023年12月7日 12時
