第五十三話 心の穴 ページ7
愁side
当然ながら、昨日は一睡もできなかった。どうすればいいのか全く分からない。
取り敢えず今日の分の教科書とノートなどの学習道具を持って行ったが、千と万に遭遇してしまいかなり焦った。どう説明しようか悩んだ末、Aに頼まれたと無難な解答をしてしまった。
千一「なぁ愁〜、今日は部活来るのか？」
そういえば昨日は無断で部活を休んでしまった。武藤先生に謝りに行かないと…。
愁「うん、そのつもりだよ」
千一「おい愁？どこ行くんだよ？」
愁「武藤先生のところ。昨日無断で休んだから謝りに行かないと」
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数学科の準備室へ向かう。すると、準備室から出てくるAの姿が見えた。Aも同じように武藤先生に用があったらしい。
『…教科書、ありがとう』
愁「うん」
愁「失礼します。1年A組の藤原愁です。武藤先生に用があって来ました」
俺が入ってすぐ、千田先生が準備室を出た。気まずい雰囲気になるから丁度良かった。
武藤先生は厳しい目で俺を見つめている。やはり無断で稽古を休んだからだろうか。
武藤「まさか藤原まで無断で稽古を休むとはな…何かあったのか？」
愁「家のことで、少々トラブルがありましたので。連絡ができず、申し訳ございませんでした」
武藤「…高槻にも同じことを聞いたが、本当に御家の関係なんだな。…高槻は、過度な精神的負担と言っていたが、藤原もそうか？睡眠不足のように見えるが」
精神的負担…か。それは俺も同じだ。
愁「はい。…昨夜は一睡もできませんでしたので。ご心配をおかけしてすみません」
愁「失礼しました」
剣城「おはよう、藤原君。…昨日あの後どうなったの？随分慌てて探していたみたいだけれど」
愁「見つけました。…でも場が悪かったみたいなので、暫く距離を置くことにしました」
剣城「…何があったの？」
愁「先輩に御迷惑をおかけするわけにはいきません。…これは俺たちも問題ですから」
剣城「なら早く解決して頂戴。県大会で高槻さんの調子が出なかったら、それこそ大迷惑だから」
愁「…はい。失礼します」
午前の授業はあまり頭に入ってこなかった。弁当を教室で食べる気にならなかったので、弓道場脇のスペースで貯めることにした。
「見つけた」
「見つけた」
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作者名：ｉ | 作成日時：2023年12月7日 12時
