第五十二話 気まずい空気 ページ6
Aside
朝、登校して教室に入ると、私の机の上に教科書が置いてあった。
愁が今日の日課の分を持ってきてくれたのだろう。
万次「…あ、高槻さん。愁が朝持って来たんだけど、どういうことだ？何で愁が高槻さんの教科書持ってるわけ？」
『…色々あってね。愁に態々家まで取りに行ってもらったの』
表向きは、私達は幼馴染でも付き合ってはいない。同棲なんてバレる訳にもいかないのでどういおうか迷った。
万はかなり不信がっていたが、今の状況からしてもことを大きくするわけにはいかない。愁も万に見つからないようにしてくれれば良かったのに…。
万次「ふぅ〜ん…あ、朔晦だ」
詩音「A、おはよう」
『おはよう・・・』
詩音「話があるの」
『…ごめん、武藤先生に用があるから後でね』
万次「・・・お前らなんかあったのか？」
詩音「あまり詮索しないで欲しいわ。藤原君も関係しているから少し放っておいてもらえるかしら？」
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『失礼します。1年B組の高槻Aです。武藤先生に用があって来ました』
武藤「高槻か」
『武藤先生。昨日は無断で稽古を欠席してしまい、申し訳ございませんでした』
深々とお辞儀をする私を、先生は厳しい目で見る。
武藤先生の前に座る、私の数学の担当である千田先生も、何事かと視線を向けているのがわかった。
武藤「何か理由があるなら聞こう」
『…家のことで、少々問題があって昨日は稽古どころではありませんでした。本来なら稽古に支障がないと思い、向かおうとしたときに立て続けに精神的に負荷がかかったため、連絡も無しに帰宅してしまいました』
武藤「…昨日は藤原も無断で休んだから、御家が関わっていることは察しているが、二人共無断で休むとなると、相当な負荷だったのだろうな。…いつもは真面目に稽古に来ている二人だ。今回は不問にしよう」
『ありがとうございます。』
『失礼しました』
数学科準備室を出ると、丁度愁が此方に向かって歩いてきた。愁も昨日のことで武藤先生に謝りに来たのだろう。
『…教科書、ありがとう』
愁「うん」
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作者名：ｉ | 作成日時：2023年12月7日 12時
