不釣愛２ [藤原愁] (ページ4)

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第五十話　第三者ページ4

静弥がお風呂に入っている間、テレビを見ながら少し考え事をしていると、静弥のお母さんがココアを持ってきてくれた。

静弥母「お姉さんの事、私で良ければ話を聞くわよ？第三者の方が話しやすいこともあるでしょうし」

…話したい。この胸が張り裂けそうな気持を、少しでも緩めたい。
誰かの悪口でもないし、良いかな…

『・・・私、ずっと姉の背中ばかり追ってきました。姉は学業、運動、立ち居振る舞い…何もかも完璧で、私の憧れでした。今までは姉の姿を思い出しながら振舞ってきましたが、もう姉をなぞることはできなくなってしまいました。』

静弥母「道理でAちゃんはしっかりしていると思ったわ。中学生なのに、すごく落ち着いていて、周りが良く見えていたもの…静弥も随分大人っぽいけど、Aちゃんはそれ以上に。」

『姉のようにならなきゃって勝手に思っていました。誰にもそんなこと言われていないのに…。多分、姉ばかり両親に認められていると感じていたんだと思います』

静弥母「…随分俯瞰して考えるのね。Aちゃん」

『え？』

静弥母「こんなに自分のことを俯瞰して考えているの、高校生ではあまりいないんじゃないかしら？」

俯瞰・・・。確かにそうかもしれない。偶に自分を客観的に見る癖がある。今こうしている時も、天井から見られているような感覚になる。

静弥母「…あまり俯瞰して考えると、自分の気持ちに蓋をしやすくなるものよ。冷静なのは良いことだけど、今はまだ高校生なの。いっぱい失敗しても良いのよ？Aちゃんの周りには、間違えた時に注意してくれる人がたくさんいるから、その度に軌道修正すればいいの。まだそれが許される歳よ」

失敗しても良い…か。まだそれが許されるのかな…？
もしかしてお姉様も、失敗できない、間違えられないって思いこんでいたから、手を差し伸べてくれた先輩に縋りつくしかなかったのかな？

『・・・姉も、失敗してもいいって言ってくれる人がいたら、もっと自分にも優しくなれたのかな…？』

静弥母「…そうね」

『明日も泊って良いですか？勿論、その分家事のお手伝いもしますし、学校へも行きます』

正直、まだ心を休めたい気持ちと迷惑をかけたくないという気持ちがぐちゃぐちゃだ。でも、少しだけ時間を取ってしっかり考えよう。中途半端は良くない。

静弥母「…わかったわ。でも、無理はしないでね。麻ちゃんも心配してたんだから」