第七十三話 心の闇 ページ27
「Aちゃんを守りたい」
そう当時の愁は言ったそうだ。すごく、すごく嬉しかった。愁の存在が、私にとってどれだけ大きなものなのか、嫌というほど知っている。実際、中学の時も見えないところで私を守っていてくれた。今も、私のことを気遣ってくれているのが犇々と伝わってくる。
なのに、何だろう・・・この置いて行かれている感覚は。私は、愁のために何かできているのだろうか?
勉強も教えてもらってばかり、弓道も敵わない、恋愛もこれからで何も分からない、幼馴染としても何もできていない。なのに、私は何時も愁に守ってもらってばっかりだったなんて…。
___________________________________そもそも、愁は何でこんな私を好きになったんだろう…?何を以て私を守りたいと思うのだろう?
容姿も性格も成績も、私より優れた人は五万といる。なのに、何で私なの?幼馴染だから?いや、そんなの環境要因でしかない。
『一体・・・』
沙絵「A姉さま?どうかしたの?」
『あ、あぁ沙絵ちゃん…何でもない。ちょっと考え事してただけ』
沙絵「そうでしたか。…私は、A姉さまとこれからも一緒に居たいと思っています。愁兄さまと恋仲になられたのなら尚更」
え、あぁ。どっちの家で暮らすかを考えているのかと思われているのか?
確かに、私もこのままこっちに居られれば嬉しいけど、東条さんや他の使用人さん、そして愁の御両親にも迷惑はかけられないし…
『そう言ってもらえると嬉しいな。・・・でも』
沙絵「悩んでいるということは、家で暮らしたいとお思いなんですね?」
『え?・・・確かに』
沙絵「ふふ・・・お父様もお母様も、A姉さまの事を迷惑には思いませんから安心してください!もし何かあれば沙絵にお任せを!」
沙絵ちゃんは相変わらず仲裁が上手い。そして何より察しが良い。
沙絵ちゃんの言う通り、私はこっちで暮らしたいと思っているのかもしれない。勿論、愁と一緒に居られる時間が増えるのは嬉しいが、沙絵ちゃんとも会えるというのも大きな要因だ。妹がいない私にとって、沙絵ちゃんは実妹のように思える存在だ。姉を失ったからかもしれないが、兄弟姉妹がいるのは凄く心が落ち着く。
愁「お風呂上がったよ」
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作者名:i | 作成日時:2023年12月7日 12時