第七十一話 意思 ページ25
Aside
今日は久しぶりに愁の両親が帰っていていた。私の両親も呼んで、入学式以来の食事会だ。
愁「Aとのことで話があります」
愁父「…なんだ」
愁「俺たちは、互いの両親によって決められた許嫁の関係ではなく…結婚を前提とした恋人という関係になろうと、二人で決めました」
改めて“恋人”という言葉を聞くと、恥ずかしくなって目線が下がる。
『・・・お姉様の事があって、私の為に愁との婚約を決めてくれたのだと思います。しかし、私は互いの両親同士で決めた関係ではなく、自分たちで思いを伝え合って決めた関係になりたいと、思います』
A母「…良かった」
『え？』
A母「ずっとAと愁君の気持ちがわからなかったから。Aも愁君も、自分の気持ちを素直に伝えられない性格や環境でしょう？でも、二人の関係も悪くないから、恋心が芽生える前に恋愛そのものを制限しようと、早めに決断をしたの。だから、少し罪悪感があったの」
愁父「しかし、Aちゃんはこれからどちらに住まう？恋人となるのなら、Aちゃんの進路も私たちで決めるわけにもいかない。このまま藤原家に居るのは構わないが、縛り付けることもないからね」
確かに・・・。元々私は高校を卒業したら愁と籍を入れることになる。そして進学はせずに、愁のお母さんと同じように家業を支える役割を担うはずだった。それが無くなった今、私が藤原家に居座り続ける意味も無い・・・
A父「私としては、Aには家に帰ってきて欲しいと思っている」
A母「そうね、何時までもお世話になる訳にもいかないわ。でも・・・折角結婚を前提に付き合っているんだから、半同棲のままでもいいと思うのよねぇ・・・Aはどう？家に帰って来たいか、愁君と一緒に居られる時間を増やしたいかで言うと、どっちかしら？」
母が面白半分で聞いてくる・・・。言い方が少し揶揄っているが、私としても正直愁と一緒に居たいとは思う。でも、何時までもお世話になる訳にはいかないし・・・
愁母「今すぐ決断する必要はありませんよ。愁と二人で、ゆっくり決めなさい。・・・ここまで事が運んでいたのですから、私たちは二人の決断を咎めませんよ」
『・・・ありがとうございます。少し、時間をいただき、ゆっくり考えたいと思います』
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作者名：ｉ | 作成日時：2023年12月7日 12時
