第七十話 意地悪 ページ24
愁side
『愁、お待たせ』
愁「お疲れ様。…今日は何も無かったかい？」
『うん。』
やはり俺に気を使っているのか、Aは少し表情を曇らせた。わかっているから余計に異変に気付きやすい。
愁「…稽古前の事は？」
『…詩音から聞いたんだ』
愁「あぁ」
『ごめんね、心配かけて。中等部の時もたくさん迷惑かけたよね…？今日もそれがらみでしょ？一緒に帰ろって言ってくれたの』
愁「勿論。Aが悲しむようなことをするのは許せないからね。中等部の時は、俺がお節介だっただけだよ」
昔から正義感とは関係なく、Aが悲しむことや傷つくことが許せないと思うことが多々あった。いじめの事もその一つだ。今思えば、Aを大切に思っているからだったのだろう。
『ありがとう、愁。・・・って、なんで笑ってるの？』
愁「いや、理由がわかって嬉しいんだ」
『理由？』
俺は口をAの耳元へ持っていき、周りに聞こえないように囁く。
愁「…Aが好きだってこと」
『！！///・・・ちょっと///』
Aは途端に頬を染め、俯く。少しばかり意地悪をしてみたいと思っての行動だが、思いのほか効果があったようだ。
愁「さ、早く帰ろう。東条さんを呼んでいるから一緒に乗せてもらおう」
『///・・・うん』
これでAの気持ちが少しでも解れていれば良いが、当分弓道部のメンバーや朔晦にも協力を仰いで、いじめ対策をしなければ。
送迎の車が到着し、東条さんが下りてくる。Aをエスコートしてから俺も乗り込む。
東条「お帰りなさいませ。愁坊ちゃま、Aお嬢様。今日は旦那様と奥様がお帰りになっておりますよ」
愁「…わかった」
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作者名：ｉ | 作成日時：2023年12月7日 12時
