不釣愛２ [藤原愁] (ページ17)

今日:7 hit、昨日:18 hit、合計:4,131 hit

第六十三話　影ページ17

Aside

放課後、弓道場。
稽古が終わり、自主練習をすることを建前に弓道場を貸し切った。

詩音「全く…やっと仲直りしたのね？」

『心配をかけしました…』

詩音「本当よ…！でも、私もたつ兄も本当のことを素直に言えなかったのは同じね」

龍也「まぁな。・・・改めて、俺は花梨さんと当時交際していた望月大輝の弟だ。兄がお姉さんに、取り返しのつかないことをしてしまった…。本当に申し訳ない」

『いえ・・・先輩は関係ないですよ。もう何度も家に来てお詫びをしていただいているのは、両親に聞いてわかりましたから…顔を上げてください』

詩音「…そして、私の父が事故とはいえ、花梨さんを弾いてしまった…ずっと隠していてごめんなさい」

『…お姉様が赤信号で飛び出したのは事実だし。それよりも、正直に言ってくれて嬉しかった』

重い内容で悩んだり、勘違いして変なプライドが邪魔したり…でも、こうして本当の事を知ることができて良かった。

私も、姉の背中を追えなくなって不安だったけど、これからは自分にしかないもの＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿愁や詩音、望月先輩を始めとする弓道部のみんなと一緒に、こうしてぶつかり合いながら成長していくんだと、今回の件を通して思った。

詩音「…それじゃあ、私達は帰るね。・・・A、また明日！」

『うん！また明日！！』

詩音と望月先輩の背中を見送ると、シンと静まり返った弓道場に風が入ってきた。

『・・・愁』

愁「何？」

昨日と同様に詩音に言われたことが、頭を過った。

“弓道部の大会が終わるまでに白紙にするか、告白して正式に付き合うか決めなさい！”

・・・ごめん、詩音。私、欲張りなのかもしれない

『許嫁の件だけど＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿白紙にさせて欲しいんだ』

愁「！…それはどういう」

私、愁とは両親が決めた関係でいたくない…！

『愁・・・私と_____結婚を前提に付き合ってください』

許婚の関係を白紙にし、愁に告白をして、正式に付き合う。
そして、今度は“恋人”として、婚約者になる。

愁「っ！＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿はい。よろこんで」

空が夕日によって緋色に染まっている。そして再び弓道場に風が吹いた。
その瞬間、私と愁の影が重なった。