第六十話 卑怯な男 ページ14
愁side
昨日電話でAと話した結果、お互いに誤解をし合って、事を大袈裟にしていたのだと分かった。だが、何か腑に落ちない。本来誤解とわかったらスッキリする筈だ。しかし、俺の胸にはずっと靄がかかっているような、もうすぐで答えが出るのにもう少しで見えるのに、目がかすんでしまうような感覚だけがずっと残っている。
今日Aと、互いの気持ちを確認しようと思って無理に帰ってきてもらった。学校での様子を見るに、Aもまた何かを感じているようだった。
『…愁に聞きたい事があるの』
愁「…」
『…私達が許婚になった4年前。愁は、その話を聞いたとき…どう思ったの?』
愁「・・・Aを、守りたいと思ったんだ。何かから」
『何か、って?』
愁「…わからない。でも、この世に花梨さんのような残酷な事件があると知ったらすごく憤りを覚えた。もし、Aの真面目さや優しさに付け込んで、似たような男がAを壊してしまうかもしれないと思うと、胸が苦しくなった」
『・・・愁は、優しいんだね』
優しい?何故だ?
愁「それば違う。…俺は許婚という関係になることでAが傷付く姿を見たくない、という己の望みをかなえたかっただけだ。俺は、そんな卑怯な男なんだ」
よく考えもせず、自分の想いひたすらに告げる己の愚かさに心底軽蔑する。
愁「・・・あの日も、俺の今までの行動を以てしても勘違いされたんだと思ったら苛々してしまった。自分の心の狭さを痛感したよ…」
Aを守りたいって思っておきながら、結局Aを傷付けてしまった。本当に自分が情けない。
『私ね自分の利益しか考えていなかったの…愁が私にいつも優しくしてくれたり、私の事理解してくれたり、ずっと側にいてくれるのは、許婚だからだって思ってた。でも心のどこかで、それでもいいから愁といたいって思いがあったの。だから、愁が私の事好きじゃなくても、許婚のままだったら…まるで恋人みたいに接してくれるんだって思ってた…私も卑怯な女だよ』
それは違う。俺は素直に、Aに優しくしたい。一番の理解者は俺でありたい。側にいたいと思っている。ただ、それだけだ。決してAを好きじゃなかったわけじゃ_________
愁「っ!!」
『・・・愁?どうしたの?』
_______やっとわかった。違和感の正体が・・・!
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作者名:i | 作成日時:2023年12月7日 12時