帰り道 ページ1
桃side
アパレルショップの正社員になって2年。
慣れなかった仕事も、今では教える立場にまでなった。
桃「じゃあ上がります。お疲れ様でした！」
緑「のんちゃん、一緒に帰ろう」
この人は、一緒に正社員をやってる神山さん。
高校からの知り合いで、正社員としては今年で5年目の大先輩。
緑「明後日新作が届くんよ」
桃「ほんまですか！どんなやつですか？」
緑「えっとな、色が……」
大好きな服について話してれば、俺たちの分かれ道はすぐそこ。
緑「じゃあまた明後日な！」
桃「はい、お疲れ様でした！」
神山さんは右へ。俺は左へと足を進める。
明日は休みだし、服でも買いに行こうかな。
その先で運命の出会いなんかしちゃったり。
なんて…クサすぎる。ドラマかよ。
赤「さ、むい……」
冷え込む夜を背に家へと足を向けた時、か弱い声がどこからか。
……お化け？いやいや。子どもか俺は。
赤「さむいよ…」
………………子どもだ。
帰り道に通る公園から声が聞こえる。それも子どもの声。
見過ごす訳にも行かず、家へと向けた足は公園の中へ。
桃「……誰か、おる？」
赤「いやっ、叩かないで！」
桃「っ、？」
滑り台の下に隠れている、男の子がいた。
俺を見た瞬間、怯えるように頭を抱えて。
桃「叩かないよ。叩かないから一旦出てき？寒いやろ？」
怯えるような素振りは見せつつも、のそのそと出てきたその子。
こんな寒いのに、半袖。もちろん肌は冷たい。
近くのベンチに腰掛け、着てたコートとマフラーを掛けてやれば、少し微笑んで。
桃「…僕、どうしたん？」
赤「ぼく……………………おうちないの」
桃「え……？」
純粋で綺麗な瞳から、一粒、二粒涙が零れていく。
赤「ぼくっ、おかんから嫌われて…おうち出されちゃった…っ」
わんわんと泣き始めたこの子を、優しく抱きしめた。
また怯えられるかも、なんて思ったけど、短い腕を回してくれた。
桃「俺の家…来るか？」
そう発言したのも、恐らく無意識だった。
呼吸が出来なくなるくらい、辛そうに泣くこの子を見ていたら、深く探るのも良くない。
家を聞き出して返すのも良くない。
赤「うんっ、…行く」
今日は俺の家に泊めよう。
明日また考えればいい。
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作者名：ヨン | 作成日時：2021年12月16日 14時
