Touch and Go

5 ページ5

.



「なにか目印とかないの....？」




結局、




彼に手を引かれたまま歩いてる私。




嫌なら振り払って逃げればいいのに




そうしない私はなんなんだろう....。




「....あ、」


「ん...？」


「....近くにドリンクバーがあったかも、」


「ドリンクバーか....。
二ヶ所あるけどどっちかな....」




独り言を呟きながらも




彼は真剣に考えてくれてるみたい。




悪い人じゃないみたいだけど




....やっぱり悪い人だよね。




だって平気であんな事するんだもん。




初めて会った女の子に




....あんなところで。




「...っ」




思い出しただけできゅんとするなんて




私もホント、どうかしちゃってる。




....この人のせいだ。




「近くにミラーボールあった....？」


「....ありました」




ミラーボールは絶対あった。




部屋に案内される間にもいくつかあったけど




ドリンクバーと近かったから
それは覚えてる。




「それじゃああっちかな....」




右に左に




彼は迷う事なく進んで行く。




....よく来てるのかな。




ってどうでもいいでしょ、そんな事。




「....たぶんこっちで合ってると思うけど、」




角を曲がるとミラーボール。




....で、ドリンクバー。




....って事は、




私がいた部屋とトイレは
真逆の端と端になるの....？




もう、道順覚えてないけど....。




「....あ、」


「友達...？」


「あ、はい、」




前方に、見覚えのある姿。




心配して待っててくれたんだ....。




「じゃあもう大丈夫だね？ 笑」


「....はい、わざわざすみませんでした」


「どういたしまして。
もう迷わないでね....？ 笑」


「....はい、」


「....あ！Aー！？」


「っ、」


「....それじゃあまたね？ 笑」


「え...」




意外にも




彼はあっさり私の手を離すと




ウィンクをひとつ残して行ってしまった。




....やっぱり軽いし




今度、とか





会える気がする、とか





今の....またね、とか






そんなのはただの社交辞令に決まってる。






「Aー！心配したんだよー！？
大丈夫だった？今の人に送ってもらったの？」


「....うん、」







って.....なんでこんなに胸が痛いの？





.

6→←4

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す