Touch and Go

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あれからユラともう一度トイレに行ったけど




あの彼と会う事はなかった。




他のみんなも最低一回は行ったけど




誰もそれらしい人には
会わなかったって言ってた。




あの人はどうして私なんかに
声を掛けたんだろう。




どうして私なんかにあんな....。




思い出すだけで身体の奥が
きゅんとするけど




それはあの人が付けた紅い痕のせい。




あの時ピリっと感じた痛みは....キスマーク。




....俺の事忘れないおまじない、
とか言ってたっけ。




確かに、鏡を見るたび目に入るから




嫌でも彼の事を思い出す。




だけど、




もう会う事なんてないんだから
早く忘れるに限る。




気にしたところでああいう人なんだから




私なんかを本気で相手にするとも思えないし。




....あの時は




たまたま私が通り掛かって




たまたま引っ掛かっちゃっただけ。




女の子なら誰でもよかったんだと思う。




自分を受け入れてくれる女の子なら。




....ツイてない。




ていうか、あれは迷った私も悪い。




迷わなければ




スマホを置いて行かなければ




そしたら捕まる事もなかったのに。




....って、今更言っても遅いけど。




「....あれ、Aちゃん？」


「...？」




すれ違いざま名前を呼ばれて
振り返ってみたら




「....当たりだ。また会えたね....？ 笑」


「っ、」




....びっくりした。




だってそれは




あの時の彼だったから。




「大学生かと思ってたけど、
社会人なんだ....？ 笑」




....外で見ても綺麗な人。




ただ単に驚いてるのか




それとも見惚れてるのか




言葉を発せないでいる私。




「....俺の事忘れちゃった？ 笑」




忘れる訳なんてない。




たったの今だって




考えちゃってたんだから。




「なんで....私の名前、」


「やっと喋ってくれた。笑」


「あの、」


「友達がそう呼んでたでしょ...？」


「、」




そういえば




ユラが私を見つけた時




” A “ って呼んでたような....。




「Aちゃんは今帰り....？」


「そう、ですけど、」


「俺これから出勤なんだけど、
よかったら一緒に来ない？ 笑」


「え...」





これから出勤....？






て事は







この人ってもしかしてホストとか....？





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