好きだって言っただろ？

9 ページ9

.



昨日は結局、
私の最寄り駅まで送ってくれたユンギさん。




家まで送る、って言われたけど
さすがにそれは悪いと思って。




それに、驚いたのは、改札まで降りて来て
ずっと見送ってくれた事。




振り返っても振り返っても




まだユンギさんはいて。




きっと、私の姿が見えなくなるまで
見送ってくれたんだと思う。




優しい人........なんだよね。




昨日一日で随分とイメージが変わった。




やっぱり、噂はあくまでも噂で




ユンギさん自身は悪くないのかな。




......でも、昨日キスされたし。




付き合ってもないのにキスなんて、
軽いって思ってもおかしくないよね？




それとも、私の考えが古い？




.....もうやだ。




頭の中、ユンギさんの事だらけだ。




「よう......はよ」




机をトントンと叩かれて顔を上げると




「......ユンギさん」




......昨日と同じ、優しい笑顔。




「昨日、ちゃんと帰れたか？」


「......あ、はい。ありがとうございました」




なんでドキドキしてるんだろ。




「......ちゃんと、考えてくれんだろ？」


「........一応」


「ふ......一応かよ。笑」




そう言ってユンギさんは
私の頭を撫でて離れて行った。




私......なんかおかしい。




「ね、A、今ユンギさんと喋ってたよね？」


「......ジス」




ジスは私の同期で、
社内で唯一仲良く出来る子。




「いつの間に仲良くなったの？」




私に顔を寄せて、ヒソヒソ話す。




「別に、仲良くなんか」


「だって、あのユンギさんがにこやかに
話してたじゃん！」




あのユンギさんが、って......。




「ね、ジス」


「なに？」


「ユンギさんの噂って、」


「......ああ、あれね。あんなのただの噂でしょ？
ユンギさん優しいし、誰にも分け隔てないから」




......優しいんだ。やっぱり。




私が噂を信じて、
ユンギさんを見てなかっただけ？




「でもさ、ユンギさん優しいけど
誰にでも心許してるワケじゃないと思うよ？」


「え」


「私だってあんな風に話した事ないもん」





......そうなの？







ジスなんて、私よりうんと可愛いのに。




.

10→←8

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す